KRYSTIAN ZIMERMAN ツィメルマン

2010年舞台鑑賞総括

少し気が早いけれど、今年のまとめを書いておこう。今年はあと佐藤俊介のコンサートが予定されているのだが、行けるかどうか雲行きが怪しくなってきた。もしかすると、後から多少加筆するかもしれない。

1/22 『ブベニチェクとドレスデン国立歌劇場バレエ団の俊英たち』ゲネプロ
さいたま芸術劇場 大ホール
「ステップテクスト」
「ル・スフル・ドゥ・レスプリ」

2/20 二期会「オテロ」
東京文化会館
http://luncheon-today.cocolog-nifty.com/blog/2010/02/post-ce45.html

3/18 パリ・オペラ座「ジゼル」
アニエス・ルテステュ&ジョゼ・マルティネス
東京文化会館
http://luncheon-today.cocolog-nifty.com/blog/2010/03/318-a00e.html

4/19 アンネ=ゾフィー・ムター&ランバート・オルキス
ブラームス ヴァイオリンソナタ
サントリーホール
http://luncheon-today.cocolog-nifty.com/blog/2010/04/in-c743.htm

5/13 ツィメルマン ショパン・プロ
武蔵野市民文化会館 大ホール
http://luncheon-today.cocolog-nifty.com/blog/2010/05/513-8fdc.html

6/5 ツィメルマン ショパン・プロ
サントリーホール
http://luncheon-today.cocolog-nifty.com/blog/2010/06/65-82c4.html

6/11 『小菅優の現在』
小菅優;樫本大進;佐藤俊介;川本嘉子;趙静;居福健太郎
さいたま芸術劇場 音楽ホール
http://luncheon-today.cocolog-nifty.com/blog/2010/06/vol2-5d58.html

6/12 ツィメルマン ショパン・プロ
所沢市民文化センター ミューズ アークホール
http://luncheon-today.cocolog-nifty.com/blog/2010/06/612in-dca3.html

6/18 シリーズ〈日本の歌曲と音の魔術師たち〉第38回 
信時潔III
音楽の友ホール
http://luncheon-today.cocolog-nifty.com/blog/2010/06/post-6b74.html

6/22 ロイヤル・バレエ「うたかたの恋」
タマラ・ロホ&カルロス・アコスタ
東京文化会館
http://luncheon-today.cocolog-nifty.com/blog/2010/06/post-014f.html

7/17 二期会「ファウストの傲罰」
東京文化会館
http://luncheon-today.cocolog-nifty.com/blog/2010/07/20100717-05ef.html

7/29 エトワール・ガラ Aプロ
オーチャードホール
http://luncheon-today.cocolog-nifty.com/blog/2010/08/a-729-1624.html

8/22 東京バレエ団「ドン・キホーテ」
シムキン
ゆうぽうと
http://luncheon-today.cocolog-nifty.com/blog/2010/08/post-0e25.html

9/9 東京バレエ団「ジゼル」
アリーナ・コジョカル&ヨハン・コボー
ゆうぽうと
http://luncheon-today.cocolog-nifty.com/blog/2010/09/post-bd73.html

9/30 ツィメルマン&ハーゲンQ
バツェヴィチピアノ五重奏、ヤナーチェクSQ#1,シューマンピアノ五重奏
武蔵野市民文化会館 大ホール
http://luncheon-today.cocolog-nifty.com/blog/2010/10/930-6eb6.htm

10/1 ハーゲン・プロジェクト1
ツィメルマン&ハーゲンQ
ルトスワフスキSQ、シューマンSQ#3&ピアノ五重奏
トッパンホール
http://luncheon-today.cocolog-nifty.com/blog/2010/10/101-3831.html

10/2 ハーゲン・プロジェクト2「ウィーンからの風12」
ウェーベルンSQ、シューベルトSQ#13、ベートーヴェンSQ#8
トッパンホール
http://luncheon-today.cocolog-nifty.com/blog/2010/10/post-97f2.html

10/3 ハーゲン・プロジェクト3「ウィーンからの風13」
シューベルトSQ#14&15
トッパンホール
http://luncheon-today.cocolog-nifty.com/blog/2010/10/post-d47f.html

10/17 マウリツィオ・ポリーニ
ショパン、ドビュッシー、ブーレーズ プログラム
サントリーホール
http://luncheon-today.cocolog-nifty.com/blog/2010/10/20101017-c361.html

10/18 ポリーニ 記念講演会
サントリー ローズホール

10/27 オットー・ビーバ博士によるレクチャー・コンサート
赤池優(ソプラノ);北村朋幹;クァルテット・エクセルシオ
川口リリア 音楽ホール
http://luncheon-today.cocolog-nifty.com/blog/2010/10/post-95c0.html

10/31 庄司紗矢香&ジャンルカ・カシオーリ
「ベートーヴェン ヴァイオリン・ソナタ」
さいたま芸術劇場
http://luncheon-today.cocolog-nifty.com/blog/2010/11/post-aac3.html

11/22 マリス・ヤンソンス:RCO;アンナ・ラーソン
マーラー交響曲第3番
サントリーホール
http://luncheon-today.cocolog-nifty.com/blog/2010/11/mrco3-d67d.html

12/1 アルゲリッチ セレブレーションズ
マルタ・アルゲリッチ;アルミンク:新日本フィル
シューマン&ラヴェル ピアノ協奏曲
すみだトリフォニーホール
http://luncheon-today.cocolog-nifty.com/blog/2010/12/20102-a701.html

12/16 佐藤俊介 トッパンホール ランチタイムコンサート
トッパンホール
http://luncheon-today.cocolog-nifty.com/blog/2010/12/post-185c.html

バレエ 6公演
室内楽音楽会 13公演
オペラ・声楽 3公演
オーケストラ 2公演

サントリーホール  4
東京文化会館    4
トッパンホール   4
さいたま芸術劇場  3
武蔵野市民文化会館 2
ゆうぽうと     2
所沢ミューズ    1
オーチャードホール 1
音楽の友ホール   1
川口リリア     1
トリフォニーホール 1

バレエは6公演と少なめだったが、パリ・オペラ座、英国ロイヤルはプロダクションの完成度が高くダンサーも脚本も舞台美術も衣装も照明も満足度が高い。でも最も印象が強烈だったのはアリーナ・コジョカルの踊るジゼル第2幕だった。

二期会「ファウストの傲罰」はオペラに入れているけれど、これはダンスが印象深い。そういう意味ではベジャールバレエ団とメータ指揮イスラエル・フィルの公演を見逃したのは残念だった。(高額チケットに手が出なかったのと、有名指揮者とオーケストラの演奏が必ずしもバレエを生かすというものでもないし・・・と思っていたのが失敗だった。)

今年もポリーニとツィメルマンからはたくさんの感動を受け取ることができた。また念願のアルゲリッチを聴くことができた。彼女の紡ぎだす音楽は他の誰とも異なる人肌の温度が感じられ、得難い経験だった。ヤンソンス:RCOのマーラー交響曲第3番はとても楽しみにしていた演奏だった。美しく上品な金管楽器群の響きにはうっとりさせてもらったし、アンナ・ラーソンの音量としては決して小さくないのに静かに語りかけるような歌にも心を揺すぶられた。

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ハーゲン プロジェクト1 10/1 トッパンホール

ハーゲン プロジェクト 1
2010年10月1日 トッパンホール

ハーゲン・クァルテット with クリスティアン・ツィメルマン
Hagen Quartett with Krystian Zimerman

ルトスワフスキ 弦楽四重奏曲(1964)
Lutoslawski Kwartet smyczkowy (1964)
Introduction
Main movement

シューマン 弦楽四重奏曲第3番 イ長調 Op.41-3
Schumann Streichquartett Nr.3 A-Dur Op.41-3
I   Andante espressivo
II  Assai agitato
III  Adagio molto
IV  Alleglo molto vivace

シューマン ピアノ五重奏曲 変ホ長調 Op.44
Schumann Quintett für Klavier und Streichquartett Es-Dur Op.44
I   Allegro
II  In modo d7una Marcia. Un poco largamente
IV  Allegro,ma non troppo

********************************

ルトスワフスキのこの曲を聞くのは初めてだったけれど、以前ルトスワフスキピアノ協奏曲の演奏の前にツィメルマン自身がしてくれた偶然性の音楽における約束と効果とルトスワフスキのその人の人間性について説明を聞いたせいか、私は違和感はなかった。しかし演奏終了後に母は「いつまで音合わせやっているのかなと思った。」と言っていた。確かに、そういう感じはあった。1stVnのルーカスの表情がもっと決然としたものだったら違ったかもしれないけれど、曲の構成自体がもともとそうなのだから・・・第2楽章に入って、各楽器がブーンと唸り始めてからは、このカルテットの本領発揮、鋭利で攻撃的な音同士が不思議なバランスでミックスされて心地よい。

シューマンの弦楽四重奏曲第3番はピアノ五重奏ほどの華やかさはないものの、シューマンらしい歌が寄せては返す波のように現れるロマンティックな曲で、ハーゲンQが一体どんな演奏をするのか楽しみだったけれど、鋭い切り込みがあったわけでもなく一般的なシューマンの演奏だったような気がする。

さてメインプログラム、ピアノ五重奏曲、ツィメルマンは本日もたいへんご機嫌麗しく、眼鏡をかけずに登場。最後までかけなかった。楽譜は置いていたし、譜めくりの人もいたけれど、何度も演奏したのであまり楽譜を見る必要が無くなったのかな。
この日はツィメルマンがフレーズごとにルーカスの顔を見て(もちろん、2ndVn、Va、Vcのこともある)タイミングを計っていただけでなく、ニュアンスも伝えていて弾き振りのような印象。全体としてはルービンシュタインのピアノ伴奏を彷彿とさせるものだったけれど、細部での歌い方はもっと女性的な柔らかさを出していた。ピアノに触発されたのか、先ほどのシューマンより弦楽器の音色が光沢を帯び情熱的に謳い、細部まで計算された艶やかな演奏だった。
演奏終了後、舞台袖に戻る時、譜めくりの女性を先に通して自分は最後になるツィメルマン。カーテンコールで何度も呼び出されるも終始リラックスした表情のツィメルマンに対して相変わらず表情が硬いクレメンス。

トッパンホールの席は前目の中央で音のバランスがよく、各楽器の音がクリアなのに柔らかく心地よかった。それにしても、これでしばらくツィメルマンのピアノを聴けないかと思うとたいへん寂しい。柔らかな音の響きのこの小さなホールで、ツィメルマンのリサイタル(シューマン暁の歌とかブラームスのOp.119)かクレーメルとのデュオ(モーツァルトでも現代曲でもなんでもOK)を聴きたい。母はクレメンスとツィメルマンのデュオを聴きたいと繰り返していた。

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クリスティアン・ツィメルマン & ハーゲン・カルテット 9/30

クリスティアン・ツィメルマン & ハーゲン弦楽四重奏団
2010年9月30日 武蔵野市民文化会館
Krystian Zimerman &Hagen Quartett in musashino Civic Cultural Hall

グラジナ・バツェヴィチ ピアノ五重奏曲 第1番
Grażyna Bacewicz Piano Quintet No.1

レオシュ・ヤナーチェク 弦楽四重奏曲 第1番「クロイツェル・ソナタ」
L.eoš Janáček String Quartet No.1 “Kreutzer Sonata”

ローベルト・シューマン ピアノ五重奏曲 変ホ長調 op.44
Robelt Schumann Piano Quintet in E-flat major op.44

*****************************************:
5人がそろって登場。たいへんにこやかでご機嫌麗しそうなツィメルマンは6月よりも、ほっそりしていた。

注文したCDは何度も発売延期になり、ユニヴァーサルでは発売中止と発表されているのでバツェヴィチのこの曲は初めて聴く。
武蔵野市民文化会館大ホールのデッドな音響だと、1階9列でも響きが足りず、直接音はかなり減衰しており、耳が音を拾うのに集中してしまい、音楽の流れにのりきれず。聴きにくい部分はなかったので、もう一度聴く機会があれば印象が良くなるだろうという予感はした。

ヤナーチェクの「クロイツェル・ソナタ」はさすがに巧い。ヴィオラの鋭い響きとチェロのたっぷりとした豊かな音で独特のリズムを奏でると、苦悩と狂気がもたらす悲劇性が強調される。ツィメルマンがいない本来のカルテットは、第1ヴァイオリンが飛びぬけて歌う曲よりは、全体が一体となって緊張感に満ちた曲を作り上げる方を得意にしている(というか、私が好きなハーゲン・カルテットの演奏はバルトーク、ショスタコーヴィチ、ヤナーチェクなど)と思うので、この曲がこの日の一番の出来だったと思う。

シューマンのピアノ五重奏では、先ほどと違って、ツィメルマンは眼鏡をかけて譜めくり付き。この曲を楽しげに演奏するツィメルマンは鼻歌も絶好調で、時に第1ヴァイオリンの音より大きかったかも。第3楽章では急加速して弦楽器が一瞬バラバラになってしまったけれど、そのせいで緩い演奏に緊張感がでて楽章の最後にかけて盛り上がったのだけれど、ここでパラパラと拍手。友人が、緊張が緩むと嫌がっていたけれど、仕方ないと私は思った。誰かさんのせいです。第4楽章ではきっちりまとめて、和やかに終了。

演奏が終わったら、いつの間にか眼鏡は外していたツィメルマンは至ってご機嫌。自信に溢れたヴェロニカの笑顔に対して、少々遠慮がちな他の面々。クレメンスははにかんだような表情のままで視点が定まらない。演奏は堂々としているのに、不思議。
明日からのトッパンホールでの演奏に期待が膨らんで、幸せな気分で帰宅した。

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来週から2010年秋の来日ツアー開始

いつの間にか、もう来週からツィメルマンとハーゲンSQとのコンサートが始まる。ジャパン・アーツにはツィメルマンのインタビューが掲載されたが、ザルツブルク音楽祭以前のもの・・・予定ではザルツブルク音楽祭でのリサイタルや室内楽コンサートの様子が報告されるはずだったのかもしれないが。

英国ロイヤル「椿姫」最終日のヴィオレッタはアンナ・ネトレプコが出演することになって、こんなこともあるのだなぁと、驚いている。

ツィメルマンが元気に来日して、いつものように素晴らしい演奏を聞かせてくれる事を祈るしかないけれど、「音楽の友」10月号 クレーメルのインタビュー記事の中で、来年はプライヴェートでツィメルマンとイタリアへ行くと書いてあった。ツィメルマンの来年は演奏活動休止期間中なのでプライヴェートと言っているのであって、単に観光とか保養に行くわけではなさそう。

今回の演奏曲はあまり予習していない。シューマンのピアノ五重奏曲だけでも少し聴いておこうかな。

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6/12 クリスティアン・ツィメルマン ピアノ・リサイタル2010 所沢

梅雨入り前、気温は高いものの、風があり、戸外で過ごす時間が気持ちよく感じられる一日、初めての所沢ミューズ アークホール。

あまりの舟歌の美しさに何も言えない。
2000人もいたとは思えないくらい、自宅に招かれて聴いたかのような親密な一体感だった。
前半からツィメルマンの音に包まれて気持ちよく夢に誘われるような感じだったのに、客席のあちらこちらから雑音が聞こえて、そのたびにいらつくこともあったのだけれど、ソナタの3番では、テンポを落としことさら弱音の美しさが際立ったところから、それまで無神経に音を立てていた人までもが演奏に引き込まれ、ホールの空気が変わったのだ。

今年のショパンプログラム日本ツアー最後の演奏会は、熱狂と言うにはあまりにも穏やかで暖かい親密な雰囲気の中で締めくくられた。私にとってとても幸せな1ヶ月間だったけれども、しばらく他の音楽は聴きたくない。このあと9月まで一体どうすればいいのだろう。というか、そのあとしばらくツィメルマンの演奏を聴けない間、他の人のピアノを聴けるだろうか?

3階前列中央は、残響の長さに煩わされることもなく、ペダルを踏むたびに靴がきらっと光るのが綺麗で、なかなか良い席だった。あれで、手すりがもっと低ければ最高なのだけど。

広い欅並木の歩道にさらに広大な航空公園。なんともいえない長閑な雰囲気。ツィメルマンが日本ツアー最終日に選ぶ理由の一つは東京に比較的近くて、緑豊かな公園に隣接する立地条件なのかもしれないと思った。

*******
ところで、何度目かのカーテンコールで、ゆっくりと会場を見渡し、スタンディングオベーションしている人を見つめて微笑みながら、両手で大きく投げキッス、右手を軽く振ってバイバイする姿に、母までもがハートを打ち抜かれ「気さくな芸術家ねぇ~♡」さっきまで感涙を流していたのに。

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6/5 クリスティアン・ツィメルマン ピアノ・リサイタル 2010 サントリーホール

午後から晴れ、乾いた風が心地よかったので、丸の内から新橋までのんびり歩き、少し疲れたので新橋からバスで赤坂アークヒルズまで移動、開演前2時間ほどのんびり散策。泉博古館別館、スウェーデン大使館、城山トラストコート、ホテルオークラ、米国大使館前からアークヒルズに戻った。その後アークヒルズの木陰で本(ポール・ゴーギャン著:ノアノアと建築雑誌a+u Renzo Piano Building Workshop)を読んだり、雀のさえずりに耳を傾けたりして初夏の午後を気持ちよくリラックスして過ごすことができた。

土曜日でしかもブルーローズでもコンサートがあったためか、開場時刻にはカラヤン広場は既にかなりの人で賑わっていた。ツィメルマンのサントリーホールでの初日はポーランド大使館関係者と思しき人を見かけるけれど、今日は2日目のせいか目立つ人は見かけなかった。(単に気付かなかっただけかもしれないけれど。)

ホールに入るとステージ上にはマイクとカメラ、2階席にもカメラがセッティングされていたが、TV用ではなかったみたい。

Krystian Zimerman Piano Recital
 All Chopin Program
2010年6月5日  サントリーホール

ノクターン5番 嬰ヘ長調 Op.15-2
ピアノ・ソナタ第2番 変ロ短調 Op.35
スケルツォ第2番 変ロ短調 Op.31
ピアノ・ソナタ第3番 ロ短調 Op.58
舟歌 嬰ヘ長調 Op.60

会場が暗くなりざわめきが落ち着くと、間もなくツィメルマン登場。
ノクターン。優しく綺麗なだけでなく、情熱的な演奏で、先日武蔵野で聴いた時とは温度が違った。聴衆の集中力が高まるのが感じられる。演奏が終わっても、皆じっと次の演奏を待っていたので、拍手はなし。

ソナタ#2第1楽章。いきなりトップギアで入ってきた。ギシギシとレールや車両の連結部が軋めくのを厭わず、ブレーキの利かない暴走列車の中で繰り広げられるドラマを自分も乗客の一人として体験しているようだった。第2楽章では、さらにドラマが差し迫ってきてさながら地獄の淵をのぞきこんでいるような危うい状況を冷めた視点で捉えていたような気がする。第3楽章の葬送行進曲では 立派な葬列とそれを見送る大勢の人々の悲しみ、怒り、祈り、慰め、様々な感情が交錯する中、「行かないで。」と声にならない声で叫んでいるのに、どんどん霊魂が霞んで遠のいて行き、とうとう手の届かない所へ行ってしまったという感じで、まるで『ジゼル』の第2幕夜明けを告げる鐘の音の後の場面のようで、涙が止まらなくなってしまった。第4楽章、グルグルと渦巻くようにたくさんの霊魂が飛びまわっている気配がして見回すと、時々フワッと光の軌跡が浮かび上がるのが見え、「大丈夫向こうの世界からあなたを見守っているから」と幽かな声が聴こえたような気がした。会場中から割れんばかりの拍手とブラボーコール。

スケルツォ#2。この曲は少し肩の力を抜いて、ツィメルマンのハミングも絶好調。こういった曲は彼の情熱的で一途な面と、おどけた面とがうまくミックスされて、魅力が凝縮されている。

休憩を挿んで、ソナタ#3。第1楽章、ツィメルマンは相変わらずハミングしながら気持ちよさそうに演奏していたのだけれど、私はと言えば先ほどの#2のイメージが強烈で記憶の引き出しがあちらこちらで開け放たれ収拾がつかなくなっていたせいか、うわの空で聞き流してしまった。第2楽章、#2の第4楽章の続きのような、でももっと生きているこの世界に近かったような。第3楽章は美しいメロディを誇張して過去を懐かしむことはなくて、むしろ、未だ形の定まらない愛(エロス)と死(タナトス)の世界を今現在のこととして歌っていたように思う。第4楽章はこれまで全く経験したことのない異次元世界に連れて行かれて、「ここは未来の世界だよ。どう、楽しい?」と言われ驚いて目が覚めた、といった感じ。

そして最後の一曲、舟歌。「穏やかな湖面に浮かぶ二人きりのボートで囁かれる愛」ではなく「方舟に乗せられた動物たち(この日の聴衆)がノア(ツィメルマン)と共に大洪水を凌いで生き残り、やっと水が引いたあとの荒涼とした大地に降り立ち、神に祈りを捧げると、神はノア達を祝福し、契約の証に空に虹をかけた」というように感じられた。最後の音は慈愛に溢れていたのでじっくり余韻を楽しみたかったけれど、万雷の拍手、スタンディング・オベーション。ツィメルマンも満足そうだった。

サントリーホールからの帰路は放心状態で何も考えられず、まだ体中の平衡感覚が乱されたままでいる。

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5/13 クリスティアン・ツィメルマン ピアノ・リサイタル2010 武蔵野市民文化会館

Krystian Zimerman  Piano Recital
  All Chopin Program
2010年5月13日 19:00 武蔵野市民文化会館大ホール

オ-ル・ショパン・プログラム

ノクターン5番 嬰ヘ長調 Op.15-2
ピアノ・ソナタ第2番 変ロ短調 Op.35
スケルツォ第2番 変ロ短調 Op.31
ピアノ・ソナタ第3番 ロ短調 Op.58
舟歌 嬰ヘ長調 Op.60

演奏は後半が良かった。私が好きなソナタの3番(ツィメルマンの3番初めて聴いた!)とDVDでは何度も聴いている舟歌がとても新鮮だった。
武蔵野市民文化会館大ホール(2階席前列少し右)の音響は直接音は聴き取り易いけれど、ツィメルマンのいつもの豊かな響かせ方には向いていなかったかな。
あとでもう少し詳しく書けるといいのだけれど、何はともあれ、無事日本公演を迎えられてうれしい。

****************************

2010年5月18日 追記

ステージ上に置かれたピアノの位置は中央より少し右で、客席側から幾分奥まったあたり。椅子は座面に傾斜がついていて軽く前傾姿勢をとるようになっている。あんな椅子、私も欲しい、腰が樂そう。

ノクターン嬰ヘ長調は指ならしというか今回のプログラムの序奏といった趣で、あっという間に終わって、そのままソナタに入るのかと思ったけれど、拍手がおきたので、立ち上がり軽く礼。
すぐにソナタ第2番変ロ短調が始まる。第3楽章の中間部が美しく、また第4楽章はメロディアスで耽美的ですらあったと思う。全体を通して、古いアルバムをめくりながら様々なことを思い出しているようだったが、感傷的に成り過ぎることはなかった。
私はといえば、激速第1楽章から第2楽章スケルツォにはいり、あっけにとられ、文字通り固唾をのんで咽せそうなのをこらえていたので涙がでそうなった。昨年シマノフスキを聴いたときと同じ症状に陥った。
スケルツォ変ロ短調は楽器の鳴りがよく、調子が上がってきた。DVDの演奏よりかなり自由な印象。

ソナタ第3番ロ短調は好きな曲だけれど、一つ難点は、ジョン・ノイマイヤー振付の「椿姫」と密接に結びついていることだろうか。今回のツィメルマンの演奏は彼独自の世界が描かれたせいか、「椿姫」の場面に干渉されることなく最後まで聴くことができた・・・美しい世界は描かれていたのだけれど、ホールの音響のせいか諦観と言うか寂寥感が感じられた。

隣の席のご婦人は、終始スイングして時々私にもたれかかるのだけれど、ご本人は絶好調のため全く気にならない様子。終に舟歌では縦ノリに!!ツィメルマンのピアノで踊って、そのまま昇天したら悔いはないかも・・・(しかし、舟歌で縦ノリはすごいな。)

ツィメルマンは舟歌の演奏が終わったとき、指先で涙を拭っていたようだった。舟歌は、明るい日差しに満たされた穏やかな時の流れと空間を回顧していると、突然厳しい現実に引き戻されて終わったようで、愛に満ちた穏やかな人生(それが彼個人のものなのか、遍く世界中の人なのかはわからないけれど)を求める気持ちを込めてプログラムを締めくくったのかもしれない。

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2010年秋 ハーゲンSQ+ツィメルマン

ツィメルマン、5月、6月のショパン・プログラムの演奏曲目は(いつものように)ソナタの2番、3番以外分かりませんが、秋のハーゲンSQとの演奏曲目は少しずつ発表されている。それにしても、連日の強行スケジュール。

9/28 サントリーホール チケット発売5/16予定

9/29 いずみホール チケット発売6/4予定

     シューマン ピアノ五重奏曲 変ホ長調 Op.44 他

9/30 武蔵野市民文化会館 チケット発売中

     バツェヴィチ ピアノ五重奏曲 2番1番
     ヤナーチェク 弦楽四重奏曲 1番
     シューマン ピアノ五重奏曲

10/1 トッパンホール チケット発売 単券4/21(会員4/17)
     ハーゲンプロジェクト セット券4/8(会員4/3)

     ルトスワフスキ 弦楽四重奏曲(1964/70)
     シューマン 弦楽四重奏曲 3番 イ長調 Op.41-3
     シューマン ピアノ五重奏曲 変ホ長調 Op.44

10/5 東京文化会館(都民劇場音楽サークル定期公演)
     * 3/30現在演目詳細不明

サントリーホールでの演奏曲目は発表されていない(と思う)けれど、これもシューマンのピアノ五重奏曲が核でその他ということでしょうか。トッパンホールではピアノが入るのは1曲のみ。サントリーホールは他に比べてキャパシティが大きいので、こちらは選曲が変わるかもしれません。トッパンホールでのハーゲンプロジェクトは他に10/2,3両日ありますがこちらはハーゲンSQだけの演奏で弦楽四重奏が好きな人にとっては外れなしのプログラムかと。ちなみに、トッパンホールは客席数400あまりのうちセット券発売は200とか。

10/2
ウェーベルン:弦楽四重奏のための5つの楽章 Op.5
シューベルト:弦楽四重奏曲第13番 イ短調 D804 《ロザムンデ》
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第8番 ホ短調 Op.59-2 《ラズモフスキー第2番》

10/3
シューベルト:弦楽四重奏曲第14番 ニ短調 D810 《死とおとめ》
シューベルト:弦楽四重奏曲第15番 ト長調 D887

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ブラームス ヴァイオリン ソナタ

* 2/12 スナイダー&ブロンフマン、シュナイダーハン&ゼーマン、ムローヴァ&アンデルシェフスキ 加筆
* *  3/15 ヴェンゲーロフ&マルコヴィチ、ムター&ワイセンベルク、ムター&オルキス 加筆

Brahms Sonaten für Violine und Klavier

4月アンネ・ゾフィ・ムターのブラームス ヴァイオリン・ソナタを聴きに行く。演奏はおそらく2番、1番、3番という順番で2007年のクレーメル&ツィメルマンのときと同じだと思われる。その演奏はそれまで私が思い描いていたツィメルマンと大違いで、優しくロマンティックであり、また情熱的でもあった。もっと優等生的な演奏をする人だと思っていたので驚いたが、それから3年が経った。少し早目だけれど少し予習しておこう。

Op.78 Brahms Sonaten für Violine und Klavier Nr.1 G-dur
有名なこの曲、ブラームス自身のOP.59-3「Regenlied」Op.59-4「Nachklang」のメロディを使っているのが「雨の歌」と呼ばれる所以らしいが、フィッシャー=ディスカウが歌う曲を聴くと少々陰鬱で歯がゆいような思いも感じる。歌詞の内容は雨に打たれて子供のころを思い出し、自然に対する畏敬の念と生命を感じるというような、神秘主義的内容。クララ・シューマンが好きだったというこの曲を使って書きあげた初めてのヴァイオリン・ソナタが完成するとブラームスはクララのもとに楽譜を送ったとのこと。私にはOp.59よりOp.78のほうが豊かな感情と官能性が感じられる。ピツィカートの音を聴くと演奏者が抱いている雨の様子が目に浮かんで楽しい。

Op.100 Brahms Sonaten für Violine und Klavier Nr.2 A-dur
ブラームスの作品の中では明るいのびやかな雰囲気がある曲。コンサートの一曲目にこの曲を持ってくるのもたぶんそういう理由じゃないかしら。またヴァイオリンにとっては演奏しやすい調性らしいから指ならしにもいいのかも。ヴァイオリンとピアノが交互に語りかけ相手の話に耳を傾け相槌を打つような穏やかな部分と第2楽章の心弾み歌いだしたくなるようなところから感情が揺れ動くところが最も好き。

Op.108 Brahms Sonaten für Violine und Klavier Nr.3 D-moll
この曲はいかにも唐突に始まる。突然降ってきた不幸に戸惑い苦しむかのような展開。この展開の仕方が奏者によって様々で面白い。比較的淡々と諦観を強く出す人もいれば、不幸に負けてはいられないとばかりに情熱的に歌い上げる人もあり、そこが聴きどころかな。

あと数枚(ムター&ワイセンベルク、スナイダー&ブロンフマン、シュナイダーハン&ゼーマン、ムローヴァ&アンデルシェフスキ)書き足す予定

    

Szymon Goldberg,Artur Balsam(1953年)
ベルリン・フィルのコンサート・マスターだったシモン・ゴールドベルクのモノラル録音。(ヴァイオリンの音がすぐ近くで聴こえるような感じだけれど、録音状態は良好。)
1番は鬱屈した仄暗い情熱というか少し押しつけがましさを感じさせる演奏。2番の演奏も明るい解放感よりも陰影を感じさせる。クレーメルとツィメルマン程ではないが、3番が全体的にかなり速い。

Yehudi Menuhin,Louis Kentner(1956,57年)
録音状態が良くないところがあって時々音に歪みがあるのが難だけれど、人柄というか徳の高さが顕れているよう。メニューインのヴィブラートが直接的に聴く者の心を震わせる。ブラームスを聴くというよりもメニューインを聴くといった趣。

* Wolfgang Schneiderhan,Carl Seemann (1957,1960年)
温かみのある演奏で、今日的なシャープさには欠けるが、こういった演奏は現代の演奏家には聴くことができないので、癒されたいときにはいいかもしれない。

Leonid Kogan, Andrey Muitnik (1959年)
コーガンは上手だし、大変な熱演なのだけれど、録音状態が芳しくなく音割れしている。

Henryk Szeryng, Artur Rubinstein (1960年)
ピアノが美しくて、聴き惚れる。この時ルービンシュタインは70歳を超えていたはずだけれど、実にすばらしい。ブラームスのヴァイオリン・ソナタはピアノが美しいと、美しくないと、その真価が分からないのだと実感。2番のなんと気持ちのよい歌いぶり。3番はヴァイオリンの沈潜した暗い響きや時に焦燥感の感じられるような濁った音が効果的に使われ、ピアノが容赦ないフォルティシモでドラマティックに盛り上げ、劇的展開具合はある意味尋常でない。好き嫌いが分かれそうだが、3番は必聴。

Pinchas Zukerman,Daniel Barenboim(1974年)
ズーカーマンのヴァイオリンの音は低音域が良く響いて、録音当時の年齢(30歳くらい?)にしては落ち着いているけれども、高音はのびのびとした素直さがある。このころのバレンボイムのピアノは今よりも瑞々しくて魅力的。

* * Anne-Sophie Mutter,Alexis Weissenberg (1982年)
ムターの情感のこもった豊麗な響きが遺憾なく活かされた演奏で、この時まだ10代の少女とは思えない完成度ですばらしい。ただあまりの天才少女ぶりにブラームスの内奥に押し込められた屈折した思いは感じられない。そういった意味では美しいメロディが奏でられる2番が最も溌剌とした彼女の個性が生きているように思う。

Itzhak Perlman, Vladimir Ashkenazy (1983年)
ヴァイオリンとピアノの名手どうしの演奏。パールマンの音には寛大、温和なところが足りないような気がして私の好みではないけれど、これもピアノの演奏がすばらしく凡庸な演奏ではないので聴く価値はあると思う。

Gidon Kremer,Valery Afanassiev(1987年)
クレーメルはブラームスのソナタをたぶんこれしか録音していないと思う。アファナシエフによくあることだが全体的にかなり遅い。
私が好きな2番をクレーメルは穏やかに優しく奏でていて、Allegro AmabileのAllegro は完全無視の超スローモーションでAmabile(愛らしく)だけだが不思議と嫌味に感じない。1番はサントリーホールでのツィメルマンとの演奏はロマンティックだったけれど(それはたぶんツィメルマンの演奏のせいだと思う)、ここでは多少傍若無人な部分も感じられ、ブラームスへのシニカルな解釈が感じられる。そして最もドラマティックで美しい演奏が3番だ。(やはりクレーメルの奏でる音楽が大好き。)「僕たちはそれぞれ離れて誇りを持って生きてきたね。最近不安を覚えることが多いのは君だけではないよ。過去を振り返ると苦しかったことや甘美な出来事が走馬灯のように思い出されてくる。これまでの出来事をすべて受け入れ、尚且つ残された人生のすべてをかけてこの情熱を君に捧げるよ。」という風に聴こえる。他は超スローだったテンポが3番の第4楽章Presto agitatoでは誰より速く、これについてはクレーメルのこだわりを感じる。

Pierre Amoyal,Pascal Rogé(1991年)
素直な演奏で聴きやすい。1番はロマンティックで瑞々しいところと神秘主義的なところとのバランスが良い。2番、3番はブラームスの魅力の一つ多彩なリズム感が生きていると思う。ピアノが全体の構成と質感を作り出していて出色。

* * Maxim Vengerov, Alexander Markovich (1991年)
ヴェンゲーロフはいつ聴いても美しい響きと自然な流れの歌に溢れている。ただ深い感情の襞に隠れている情熱が見えてこない。それはピアノの演奏のせいかもしれない。ブラームスのヴァイオリン・ソナタのピアノがたんなる伴奏に終わってしまうと曲の魅力が半分損なわれてしまう。

Pinchas Zukerman,Marc Neikrug (1992年)
ヴァイオリンの音は美しいが、ピアノは前録音のほうが良い。前回と大きく異なるところはなし。

Gerhart Hetzel,Hermut Deutsch(1992年)
ウィーン・フィル往年のコンサートマスター ゲルハルト・ヘッツェルとヘルムート・ドイチュとの鮮烈な演奏。
クレーメルとツィメルマンとの演奏会の直後に友人が当時廃盤になっていたCDを貸してくれたのだが、数日前の演奏(色で言うと、パステルで描かれた7色の虹の外側に紫外線や赤外線まで感じられた。)とのあまりの違いに驚いた。現在のライナーノーツには心温まる演奏とあるけれど、それはロマンティックな豊饒さよりも、真っ直ぐで嫌味がなく、謹厳実直な厳しさがあった。またどこかノスタルジーを感じさせ、青白磁の香炉のようで繊細なヴァイオリンの音の美しさはピカイチ。ヴァイオリンが気持ちよく歌っている2番はドイチュが歌曲の伴奏に長けているからだろう。実演を聴きたかったな。

Kyung-Wha Chung, Peter Frankl (1995年)
チョン・キョン・ファのイメージからするとかなり控えめな演奏で慈愛が感じられるのだけれど、地味ともいえる。それはピアノのせいもあると思う。ヴァイオリンもピアノもどちらもが禁欲的、女性的すぎるのかもしれない。

* Viktoria Mullova,Piotr Anderszewski (1997年)
ムローヴァは30代半ば、アンデルシェフスキが20代半ばのときの録音。ムローヴァは彼の今日の活躍を予見していたのだろうか。
他の演奏では思い出さなかったのに、この演奏を聴いているうちに、若くして死んでしまった友人のことを思い出した。典型的優等生で声高に自己主張することなく優しく温和、でも心の中では天使と悪魔が火花を散らして葛藤しているような人だった。私にとってはさらっと聴き流すことのできない演奏で、クララの訃報を聴いたブラームスが雨の歌を演奏しているうちに嗚咽してその場を走り去ったという逸話を思い出させた。

Maxim Vengerov,Lylia Zilberstein(2004年)OP.108 3番のみ
ルガーノ・フェスティヴァル ライヴ録音。
ヴェンゲーロフの音は好き。このところ聴けないのが残念。しかし、この演奏を聴くとヴェンゲーロフが演奏活動を辞めて(休止して)しまったのは、肩の故障のためだけではないのではと思わされる。艶やかな音は美しいし、テクニックもある、でも彼だけが表現できる情念世界はここには表れていないのではないかな。まだ30代の彼が豊かな人生経験を積んで演奏活動を再開する日を楽しみにしていよう。

* Nikolaj Znaider, Yefim Bronfman(2005年)
正統派の繊細さがあり尚且つ男性的な演奏。
3番のadagioはあまりの気持ちよさに眠くなってしまった。(貶してない。)諦観や焦燥感をみせて嘆くことなく、最後までいい人ブラームスが泰然と構えている。

* * Anne-Sophie Mutter, Lambert Orkis (2009年)
今年の4月に聴きに行く演奏会と同じ奏者、プログラムでの録音。前回の録音から27年が経ち、天才少女と呼ばれたムターは女王と呼ばれるようになった。予約したCDが届くのが待ち遠しかった。しかし正直こんなに感動するとは思わなかった。美音を鳴らしてムターらしさを演出せずとも様々な音色を使い分け陰影に富んだ演奏の中に自然体の芸術家が存在していた。
それまでの上手な演奏家だけれど同性として時として苛つくときもあって積極的に聴こうという気がしなかったのが、(その点ムローヴァのほうが好きだった。)メンデルスゾーンのコンチェルト(クルト・マズア)と室内楽(アンドレ・プレヴィン)を昨年TV放送されたものを聴いてからムターに興味を持つようになった。
4月のリサイタルが楽しみ。

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2009年 ダンス&音楽&舞台公演鑑賞総括

今までやったことなかったけれど、メモとして書き出しておこう。

2009年 ダンス&音楽&舞台公演鑑賞総括

1/8 「眠れる森の美女」マラーホフ&ヴィシニョーワ 東京バレエ団
    東京文化会館
1/18 山本貴史 ノースプラザ
1/20 奇才コルプの世界  オーチャードホール
1/21 ミハイロフスキーガラ  オーチャードホール
     ルジマトフの「海賊」アリ!
    「ムーア人のパヴァーヌ」ムーア人(オテロ)、「アダージェット」。
      結局ルジマトフの姿が脳裏に焼きついている。
2/6  ベジャールガラ ギエム 東京バレエ団  ゆうぽうとホール
     「ボレロ」「ペトルーシュカ」「ドン・ジョバンニ」
2/10 新国立劇場「ライモンダ」ザハロワ&マトヴィエンコ
2/11 上原彩子 サントリーホール
2/12 ハンブルクバレエ「人魚姫」 NHKホール
      これぞ総合芸術!!ノイマイヤーの描く世界は悲しく残酷でも
    必ずそこにそっと愛がある。
2/20 エリック・クラプトン&ジェフ・ベック さいまたスーパーアリーナ
3/14 「愛の妙薬」森麻季 錦織健 ソニック・シティ
4/25 福井敬 さいたま芸術劇場
5/3  ラ・フォルジュルネ・オ・ジャポン 東京国際フォーラム
    ベレゾフスキー ホールB5
    シュ・シャオメイ ホールD7
    イド・バル=シャイ G409
    ヴァシリエヴァ 勅使河原三郎 ホールD7
5/19 ポリーニ シューマン・ドビュッシー プログラム
    サントリーホール
5/22 ツィメルマン 3大B+シマノフスキ さいたま芸術劇場 
5/23 薪能「羽衣」 氷川神社
6/10 ツィメルマン 3B(バツェヴィチ)+シマノフスキ
    サントリーホール
6/25 新日本フィル:アルミンク すみだトリフォニーホール
6/26 ヤン・ファーブル「寛容のオルギア」 さいたま芸術劇場
6/29 アレクサンダー・ガヴリリュク さいたま芸術劇場
7/24  第73回コンセール・C ドビュッシーとカプレの夕べ
8/2  バレエ・フェス Aプロ 東京文化会館
8/9  バレエ・フェス Bプロ 東京文化会館
    バレエの楽しさを堪能。これで音楽が良ければ・・・
9/5  福井敬 カザルスホール
     リサイタル後のオフ会がまた楽しかった。
10/19 バンベルク交響楽団:ジョナサン・ノット+テツラフ
     サントリーホール
10/27 シンシナティ交響楽団:パーヴォ・ヤルヴィ+ツィメルマン
     東京文化会館
11/6  BEING GIDON KREMER  オーチャードホール
11/30 マリインスキー「白鳥の湖」ヴィシニョーワ&コルプ
     東京文化会館
12/5  レ・ヴァン・フランセ さいたま芸術劇場
12/11 福井敬&ヴィンチェンツォ・スカレーラ 紀尾井ホール
12/20 「聖なる怪物たち」シルヴィ・ギエム&アクラム・カーン
     東京文化会館

ギエム     4公演
ヴィシニョーワ 4公演
マラーホフ   3公演
ザハロワ    3公演
ブシェ     3公演

福井敬     3公演
ツィメルマン  3公演

東京文化会館    6公演
さいたま芸術劇場  5公演
サントリーホール  4公演
(東京国際フォーラム4公演)
オーチャードホール 3公演

舞踊等 13公演
ピアノ(含コンチェルト) 9公演
弦楽器中心(含コンチェルト) 4公演
声楽(含オペラ) 5公演
管楽器中心 1公演
ブルース等 1公演   

ということで、ギエムとヴィシニョーワが最も多かった。そしてなんといっても、福井敬3公演というのが驚き。

バレエでは「人魚姫」が最も印象深かった。独特の振付、舞台構成、照明、衣装、音楽、そしてシルヴィア・アッツォーニの圧倒的な演技。すべてが美しく感動的だった。それに、リアブコは目の前にいたし、ノイマイヤーは躓いて、危うく私の膝に倒れこみそうになるし・・・なんてことはともかく、また日本で観たいし、音楽だけのCDと舞台全部(マルチヴューとか)のDVD出してほしい。海外までは観に行けない人のためにぜひ!!
世界バレエフェスに関しては次々と目の前に現れるスターダンサーたちに圧倒されたが、ロホ、シムキン、オシポワ、サラファーノフ、彼女・彼等にはスーパーテクニックとともに、踊る楽しさを、コピエテルス&ジル・ロマン「フォーヴ」とかギエム&ル・リッシュ「アパルトマン」、ヴィシニョーワ&マラーホフ「ル・パルク」は彼女たちならではのスターオーラを堪能。またアニエス&ジョゼとコジョカル&コボーには目の保養をさせてもらった。他の人たちにも楽しませてもらった。

音楽では5月のポリーニ、ツィメルマンのリサイタルが最高だった。
ポリーニのシューマンは大きくて、優しくて、愛が溢れていたし、ウェーベルンやドビュッシーは次々と繰り広げられるファンタジーのようで最後のころはステージにいるポリーニの姿をみているのではなく、プラネタリウムでリクライニングチェアーに腰かけ満天の星を見上げて空想世界に遊んでいるような至福の時を過ごした。
一方、ツィメルマンのバッハやベートーヴェンは今まで私が思っていた曲とは全く別物で衝撃的だったと同時に、1台のピアノでこれほど音色も響きも次々にガラッと変えられるものなのだと感心することしきり。この人の演奏するブラームスは躍動感に溢れ、ため息が出るほど美しい。Op.119の艶っぽさは古いけどルプー1976年の録音と雰囲気が似ていたかも。バツェヴィチとシマノフスキに関しては、圧倒されてうまく言葉がみつからないが、とにかくこの人の演奏はいつもこちらの予想をひらりと飛び越えて羽ばたいていく。煌めくような音で美しい演奏をする優秀なピアニストという枠には留まっていない。
ポリーニもツィメルマンもCDなどの録音とは異なり、演奏者の描く色彩と感情の渦が聴衆を飲み込み、虜にした。今この演奏が聴けて幸せだと思った。

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