GIDON KREMER クレーメル

2012年12月14日 (金)

2012年 演奏会・舞台鑑賞記録

演奏会もバレエも2012年はお終い。
前半は少なめだったのが、怒涛の11月があったために、合計24公演。
バレエの感想が未だ書けていないけれど、いつか書けるかもしれない。今年はボリショイとマリインスキーが来てバレエフェスもあって、公演数は少なめだったけれども2枚ずつチケット買うと結構な出費。来年はヨーロッパのメジャーオケが大集合でVPO、BPO、RCO、LSO、PO、パリ管に加えてルツェルン祝祭管も来るらしい。夜出歩いてばかりもいられなくなりそうで、一体どこを削るべきか思案中。たぶん来年も室内楽中心の鑑賞になりそうです。

少し早いけれど、皆様どうぞよいお年をお迎えください。

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01) 01.15 アルカント・カルテット トッパンホール
   http://luncheon-today.cocolog-nifty.com/blog/2012/01/post-8e12.html

   バルトーク:弦楽四重奏曲第6番

   ハイドン:弦楽四重奏曲 ロ短調 Op.64-2 Hob.III-68

   ドビュッシー:弦楽四重奏曲 ト短調 Op.10

   【アンコール】
   クルターク:5つの楽興の時より カプリッチョ

   ブラームス:弦楽四重奏曲第3番より 第3楽章

   J.S.バッハ:フーガの技法 BWV1080より コントラプンクトゥス

02) 01.31 ボリショイ劇場「スパルタクス」 東京文化会館
   http://luncheon-today.cocolog-nifty.com/blog/2012/02/post-99d7.html

03) 02.23 アリーナ・コジョカル ドリームプロジェクトBプロ
             ゆうぽうと
   http://luncheon-today.cocolog-nifty.com/blog/2012/03/b-9db8.html
   「ラリナ・ワルツ」振付:リアム・スカーレット
     音楽:P.I.チャイコフスキー
   「タランテラ」振付:ジョージ・バランシン
     音楽:ルイス・モロー・ゴットシャルク
   「くるみ割り人形」より グラン・パ・ド・ドゥ
     原振付:ワシリー・ワイノーネン  音楽:P.I.チャイコフスキー
   「ディアナとアクテオン」振付:アグリッピーナ・ワガノワ
   音楽:チェーザレ・ブーニ
   「椿姫」より第3幕のパ・ド・ドゥ 振付:ジョン・ノイマイヤー
    音楽:フレデリック・ショパン
   「ザ・レッスン」振付・デザイン:フレミング・フリント
    音楽:ジョルジュ・ドルリュー
   「ドン・キホーテ」デヴェルティスマン 原振付:マリウス・プティパ
    音楽:レオン・ミンクス

04) 04.04 トヨタ・マスター・プレイヤーズ ウィーン サントリーホール
   http://luncheon-today.cocolog-nifty.com/blog/2012/05/post-53c6.html

   J.シュトラウスⅡ:ワルツ『春の声』 op.410
    :オペレッタ『こうもり』序曲
    :オペレッタ『こうもり』から「侯爵様、あなたのようなお方は」
    :オペレッタ『こうもり』から「田舎娘の姿で」

   シューベルト:イタリア風序曲 ハ長調 D591
    :オッフェルトリウム『心に悲しみを抱きて』 ハ長調 D136

   ベートーヴェン:ロマンス第2番 ヘ長調 op.50

   モーツァルト:交響曲第40番 ト短調 K550

   【アンコール】
   J.シュトラウスⅡ世  騎士パズマンのチャールダッシュ
   J.シュトラウスⅡ世 トリッチ・トラッチ・ポルカ

05) 04.07 山根一仁 ランチタイムコンサート トッパンホール
   http://luncheon-today.cocolog-nifty.com/blog/2012/05/post-17fa.html
    ピアノ:鈴木慎崇

   ブラームス ヴァイオリンソナタ第1番 ト長調 Op.78

   ワックスマン:カルメン幻想曲

   【アンコール】
   クライスラー:中国の太鼓 Op.3

   バッツィーニ:妖精の踊り Op.25

06) 04.21 レ・ヴァン・フランセ さいたま芸術劇場
   http://luncheon-today.cocolog-nifty.com/blog/2012/04/post-610c.html

   バーバー:夏の音楽

   ルイーズ・ファランク:六重奏曲

   モーツァルト:ピアノと管楽のための五重奏曲 変ホ長調 KV 452

   ヴェレシュ・シャンドール:オーボエ、クラリネット、バソンのためのソナチネ

   プーランク:六重奏曲

   【アンコール】
   ルーセル:ディヴェルティスマン(ディヴェルティメント) 作品6

   テュイレ:《六重奏曲 変ロ長調》作品6より 第3楽章 ガヴォット

07) 04.30 クリスティアン・テツラフ トッパンホール

   シマノフスキ:《神話》 Op.30

   イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番 ト短調 Op.27-1

   パガニーニ:24の奇想曲 Op.1より 4曲

   クルターク:《サイン、ゲーム、メッセージ》より/《ピパルティータ》 他

   エネスク:ヴァイオリン・ソナタ第2番 ヘ短調 Op.6

   【アンコール】
   ドヴォルジャーク:ソナチネ ト長調 Op.100より
  第4楽章 Allegro/第2楽章 Larghetto
   http://luncheon-today.cocolog-nifty.com/blog/2012/05/with2012-20ee.html

08) 06.09 エフゲニ・ボジャノフ さいたま芸術劇場
     ピアノ・エトワール シリーズ Vol.18

   ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第18番 変ホ長調 作品31-3

   ショパン
  :マズルカ 第21番 嬰ハ短調 作品30-4
    マズルカ第26番 嬰ハ短調 作品41-1
    マズルカ第32番 嬰ハ短調 作品50-3
    ワルツ第8番 変イ長調 作品64-3
    ワルツ第5番 変イ長調 作品42
    ワルツ第1番 変ホ長調 作品18 「華麗なる大円舞曲」

   リスト:エステ荘の噴水
    ダンテを読んで―ソナタ風幻想曲
    オーベルマンの谷
    グノーの歌劇《ファウスト》からのワルツ

   【アンコール】
   シューベルト作曲 リスト編曲 セレナーデ

   ショパン:英雄ポロネーズ
   http://luncheon-today.cocolog-nifty.com/blog/2012/06/post-fc0c.html

09) 07.20 五嶋みどり 西本願寺書院内対面所
10) 07.21 五嶋みどり 西本願寺御影堂
   バッハ:無伴奏パルティータ&ソナタ
   http://luncheon-today.cocolog-nifty.com/blog/2012/07/30-0198.html

11) 08.04 世界バレエ・フェスAプロ 東京文化会館
12) 08.11 世界バレエ・フェスBプロ 東京文化会館

13) 09.29 ヤン・リシエツキ さいたま芸術劇場 音楽ホール
     ピアノ・エトワール シリーズ Vol.19

   メシアン:《前奏曲集》より
    第1曲〈鳩〉、第2曲〈悲しい風景の中の恍惚の歌〉、
    第3曲〈軽快な数〉、第4曲〈過ぎ去った時〉

   J. S. バッハ:パルティータ第1番 変ロ長調 BWV 825

   モーツァルト
    :ピアノ・ソナタ第11番 イ長調 KV 331(300i)「トルコ行進曲付き」

   ショパン:12の練習曲 作品25
   【アンコール】
   ショパン:《12の練習曲》作品10より
    第12番 ハ短調 「革命」
    第9番  ヘ短調
    第5番  変ト長調 「黒鍵」
   http://luncheon-today.cocolog-nifty.com/blog/2012/10/post-1ee0.html

14) 10.23 マウリツィオ・ポリーニ サントリーホール
    Pollini Perspectives2012

   マンゾーニ:Il Rumore del tempo

   ベートーヴェン:
   ピアノ・ソナタ第21番ハ長調op.53「ワルトシュタイン」
   ピアノ・ソナタ第22番ヘ長調op.54
   ピアノ・ソナタ第23番ヘ短調op.57「熱情」
   http://luncheon-today.cocolog-nifty.com/blog/2012/10/pollini-perspec.html

15) 10.31 クレーメル&クレメラータ・バルティカ サントリーホール
      The Art of Gidon Kremer

   シューマン:チェロ協奏曲 イ短調 op. 129
 (R. ケーリングによるヴァイオリン、弦楽合奏とティンパニ編曲版)

   モーツァルト:ピアノ協奏曲 イ長調 K488
    ピアノ:カティア・ブニアティシヴィリ

   【アンコール】リスト:愛の夢3番

   ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op. 61 

   【アンコール】カンチェリ/プシュカレフ :黄色いボタン
   http://luncheon-today.cocolog-nifty.com/blog/2012/11/the-art-of-gido.html

16) 11.08 ラドゥ・ルプー オペラシティ
    シューベルト・プログラム

    16のドイツ舞曲 D783, op.33
    即興曲集 D935, op.142
    ピアノ・ソナタ第21番 変ロ長調 D960 (遺作)
   http://luncheon-today.cocolog-nifty.com/blog/2012/11/post-c68f.html

17) 11.15 レオニダス・カヴァコス&エンリコ・パーチェ トッパンホール

   ベートーヴェン:
    ヴァイオリン・ソナタ第1番ニ長調Op.12-1
    ヴァイオリン・ソナタ第5番ヘ長調Op.24《春》
    ヴァイオリン・ソナタ第9番イ長調Op.47《クロイツェル》
   【アンコール】
   ストラヴィンスキー:サミュエル・ドゥシュキン編曲
  《ペトルーシュカ》よりロシアの踊り
   ベートーヴェン:
    ヴァイオリン・ソナタ第6番イ長調Op.30-1第2楽章
    ヴァイオリン・ソナタ第8番ト長調Op.30-3第3楽章
 http://luncheon-today.cocolog-nifty.com/blog/2012/11/post-aacf.html

18) 11.22 マリインスキー劇場バレエ「アンナ・カレーニナ」 東京文化会館

19) 11.25 河村尚子 さいたま芸術劇場 音楽ホール
     ピアノ・エトワール シリーズVol.20

   J. S. バッハ:《平均律クラヴィーア曲集第1巻》より
    第12番 前奏曲とフーガ へ短調 BWV 857

   ハイドン:ソナタ 第32(47)番 ロ短調 Hob. XVI:32

   ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第23番 ヘ短調 作品57「熱情」

   スクリャービン:左手のための2つの小品 作品9

   ショパン:バラード第4番 ヘ短調 作品52

   ドビュッシー:《前奏曲集》より
    〈亜麻色の髪の乙女〉
    〈アナカプリの丘〉
    〈花火〉
    ピアノのために
   http://luncheon-today.cocolog-nifty.com/blog/2012/11/post-74da.html

20) 11.27 クリスティアン・ツィメルマン 川口リリアホール
   プログラムB

   ドビュッシー:版画より
    1.パゴダ
    2.グラナダの夕べ
    3.雨の庭
   :前奏曲集第1集より 
      2.帆
     12
.ミンストレル
      6.
雪の上の足跡
      8.
亜麻色の髪の乙女
     10.沈める寺
      7.西風の見たもの


   シマノフスキ:9つの前奏曲集Op.1より
       1.アンダンテ・マ・ノン・トロッポ
       2.アンダンテ・コン・モート
       8.アンダンテ・マ・ノン・トロッポ

   ショパン:ピアノ・ソナタ第3番ロ短調 Op.58
   http://luncheon-today.cocolog-nifty.com/blog/2012/12/2012-ba94.html

21) 11.28 M.ヤンソンス:バイエルン放送交響楽団

   ベートーヴェン:劇音楽「エグモント」序曲 作品84
  交響曲第8番ヘ長調 作品93
  交響曲第7番イ長調 作品92

   【アンコール】
   シューベルト  楽興の時3番
   http://luncheon-today.cocolog-nifty.com/blog/2012/11/symphonieorch-1.html

22) 12.03 D.ハーディング:新日本フィル
   
   チャイコフスキー交響曲第4番

   ストラヴィンスキー:「春の祭典」
   http://luncheon-today.cocolog-nifty.com/blog/2012/12/post-0e8e.html

23) 12.08 クリスティアン・ツィメルマン 所沢ミューズホール
     プログラムA

   ドビュッシー:版画より
    1.パゴダ
    2.グラナダの夕べ
    3.雨の庭
   :前奏曲集第1集より 
      2.帆
    12.ミンストレル
      6.雪の上の足跡
      8.亜麻色の髪の乙女
    10.沈める寺
      7.西風の見たもの

   シマノフスキ:9つの前奏曲集Op.1より
       1.アンダンテ・マ・ノン・トロッポ
       2.アンダンテ・コン・モート
       8.アンダンテ・マ・ノン・トロッポ

   ブラームス:ピアノ・ソナタ第2番嬰へ短調 Op.2
   http://luncheon-today.cocolog-nifty.com/blog/2012/12/2012-a548.html

24) 12.12 クリスティアン・ツィメルマン すみだトリフォニー
      プログラムB

   ドビュッシー:版画より
    1.パゴダ
    2.グラナダの夕べ
    3.雨の庭
  :前奏曲集第1集より 
      2.帆
    12.ミンストレル
      6.雪の上の足跡
      8.亜麻色の髪の乙女
    10.沈める寺
      7.西風の見たもの

   シマノフスキ:9つの前奏曲集Op.1より
       1.アンダンテ・マ・ノン・トロッポ
       2.アンダンテ・コン・モート
       8.アンダンテ・マ・ノン・トロッポ

   ショパン:ピアノ・ソナタ第3番ロ短調 Op.58
   http://luncheon-today.cocolog-nifty.com/blog/2012/12/2012-636a.html

会場別鑑賞回数

東京文化会館     5 ボリショイ BalletFesA&B マリインスキー
                              BRSO
トッパンホール   4 アルカントQ 山根一仁 テツラフ
                             カヴァコス
さいたま芸術劇場 4 レ・ヴァン・フランセ ボジャノフ リシエツキ
                             河村尚子
サントリーホール  3  VPO Pollini Kremer
西本願寺       2 五嶋みどり
トリフォニーホール 1 Zimerman
所沢ミューズ     1 Zimerman
川口りりあ       1 Zimerman
埼玉会館       1 新日本フィル
オペラシティ     1 ルプー
ゆうぽうと       1 コジョカル

2012年11月10日 (土)

The Art of Gidon Kremer 10/31

2012.10.31 サントリーホール

シューマン:チェロ協奏曲イ短調op.129
ルネ・ケーリングによるヴァイオリン、弦楽合奏とティンパニ編曲版
Vn:ギドン・クレーメル

モーツァルト:ピアノ協奏曲イ長調K488
ピアノ:カティア・ブニアティシヴィリ
アンコール リスト:愛の夢3番

ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲ニ長調op.61
アルフレート・シュニトケによるカデンツァ
Vn:ギドン・クレーメル

アンコール
カンチェリ/プシュカレフ :黄色いボタン

シューマンのチェロ協奏曲は初めて聴く曲。作品番号131番のヴァイオリン協奏曲ハ長調がどことなく雰囲気が似ている。クレーメルの演奏で聴いているから余計にそう聴こえたのかもしれない。後日聴いたマイスキーとバーンスタイン指揮VPOの演奏は少々陰鬱で楽しくなかったけれど、編曲の所以か、それともクレーメルとクレメラータ・バルティカの自由な演奏の所以か、精神の飛翔が感じられて聴きやすかった。

モーツァルトのピアノコンチェルト23番は、イグデスマン&ジューとの時に大いに笑わせてもらってわかっていたはずにしても、クレメラータ・バルティカの変幻自在で崩れない盤石なアンサンブルのおかげで、ブニアティシヴィリの獲物を狙って組み伏せようとする肉食獣のような演奏が成立していた。プレルジョカージュ「ル・パルク」の中の「解放」のパ・ド・ドゥを彼女が演奏したら、冷めた眼差しの男女ではなく、もっと自分たちの愛憎をストレートに表現して身を焦がすような恋愛になっていくのではないかと思ってみたり、少し脱線したことを考えていた。

シュニトケのカデンツァは、3年前のイグデスマン&ジューの時にも聴いているけれど、あの時の演奏はもっと鋭角的なものだったと思うし、違っていたような気がする。
攻撃的な部分は影を潜め、穏やかで暖かな音が鳴っていた。ある意味クレーメルらしさが薄まっていたというか、巨匠らしくなったというか、愛に溢れて幸せそうだったというか。
しかし考えてみれば、クレーメルはいつでも優秀な女性共演者に恵まれ、愛を求めてきた人だもの、らしいといえばらしかったのかもしれない。

最終日の無伴奏を聴きたかったな。

2010年1月17日 (日)

ブラームス ヴァイオリン ソナタ

* 2/12 スナイダー&ブロンフマン、シュナイダーハン&ゼーマン、ムローヴァ&アンデルシェフスキ 加筆
* *  3/15 ヴェンゲーロフ&マルコヴィチ、ムター&ワイセンベルク、ムター&オルキス 加筆

Brahms Sonaten für Violine und Klavier

4月アンネ・ゾフィ・ムターのブラームス ヴァイオリン・ソナタを聴きに行く。演奏はおそらく2番、1番、3番という順番で2007年のクレーメル&ツィメルマンのときと同じだと思われる。その演奏はそれまで私が思い描いていたツィメルマンと大違いで、優しくロマンティックであり、また情熱的でもあった。もっと優等生的な演奏をする人だと思っていたので驚いたが、それから3年が経った。少し早目だけれど少し予習しておこう。

Op.78 Brahms Sonaten für Violine und Klavier Nr.1 G-dur
有名なこの曲、ブラームス自身のOP.59-3「Regenlied」Op.59-4「Nachklang」のメロディを使っているのが「雨の歌」と呼ばれる所以らしいが、フィッシャー=ディスカウが歌う曲を聴くと少々陰鬱で歯がゆいような思いも感じる。歌詞の内容は雨に打たれて子供のころを思い出し、自然に対する畏敬の念と生命を感じるというような、神秘主義的内容。クララ・シューマンが好きだったというこの曲を使って書きあげた初めてのヴァイオリン・ソナタが完成するとブラームスはクララのもとに楽譜を送ったとのこと。私にはOp.59よりOp.78のほうが豊かな感情と官能性が感じられる。ピツィカートの音を聴くと演奏者が抱いている雨の様子が目に浮かんで楽しい。

Op.100 Brahms Sonaten für Violine und Klavier Nr.2 A-dur
ブラームスの作品の中では明るいのびやかな雰囲気がある曲。コンサートの一曲目にこの曲を持ってくるのもたぶんそういう理由じゃないかしら。またヴァイオリンにとっては演奏しやすい調性らしいから指ならしにもいいのかも。ヴァイオリンとピアノが交互に語りかけ相手の話に耳を傾け相槌を打つような穏やかな部分と第2楽章の心弾み歌いだしたくなるようなところから感情が揺れ動くところが最も好き。

Op.108 Brahms Sonaten für Violine und Klavier Nr.3 D-moll
この曲はいかにも唐突に始まる。突然降ってきた不幸に戸惑い苦しむかのような展開。この展開の仕方が奏者によって様々で面白い。比較的淡々と諦観を強く出す人もいれば、不幸に負けてはいられないとばかりに情熱的に歌い上げる人もあり、そこが聴きどころかな。

あと数枚(ムター&ワイセンベルク、スナイダー&ブロンフマン、シュナイダーハン&ゼーマン、ムローヴァ&アンデルシェフスキ)書き足す予定

    

Szymon Goldberg,Artur Balsam(1953年)
ベルリン・フィルのコンサート・マスターだったシモン・ゴールドベルクのモノラル録音。(ヴァイオリンの音がすぐ近くで聴こえるような感じだけれど、録音状態は良好。)
1番は鬱屈した仄暗い情熱というか少し押しつけがましさを感じさせる演奏。2番の演奏も明るい解放感よりも陰影を感じさせる。クレーメルとツィメルマン程ではないが、3番が全体的にかなり速い。

Yehudi Menuhin,Louis Kentner(1956,57年)
録音状態が良くないところがあって時々音に歪みがあるのが難だけれど、人柄というか徳の高さが顕れているよう。メニューインのヴィブラートが直接的に聴く者の心を震わせる。ブラームスを聴くというよりもメニューインを聴くといった趣。

* Wolfgang Schneiderhan,Carl Seemann (1957,1960年)
温かみのある演奏で、今日的なシャープさには欠けるが、こういった演奏は現代の演奏家には聴くことができないので、癒されたいときにはいいかもしれない。

Leonid Kogan, Andrey Muitnik (1959年)
コーガンは上手だし、大変な熱演なのだけれど、録音状態が芳しくなく音割れしている。

Henryk Szeryng, Artur Rubinstein (1960年)
ピアノが美しくて、聴き惚れる。この時ルービンシュタインは70歳を超えていたはずだけれど、実にすばらしい。ブラームスのヴァイオリン・ソナタはピアノが美しいと、美しくないと、その真価が分からないのだと実感。2番のなんと気持ちのよい歌いぶり。3番はヴァイオリンの沈潜した暗い響きや時に焦燥感の感じられるような濁った音が効果的に使われ、ピアノが容赦ないフォルティシモでドラマティックに盛り上げ、劇的展開具合はある意味尋常でない。好き嫌いが分かれそうだが、3番は必聴。

Pinchas Zukerman,Daniel Barenboim(1974年)
ズーカーマンのヴァイオリンの音は低音域が良く響いて、録音当時の年齢(30歳くらい?)にしては落ち着いているけれども、高音はのびのびとした素直さがある。このころのバレンボイムのピアノは今よりも瑞々しくて魅力的。

* * Anne-Sophie Mutter,Alexis Weissenberg (1982年)
ムターの情感のこもった豊麗な響きが遺憾なく活かされた演奏で、この時まだ10代の少女とは思えない完成度ですばらしい。ただあまりの天才少女ぶりにブラームスの内奥に押し込められた屈折した思いは感じられない。そういった意味では美しいメロディが奏でられる2番が最も溌剌とした彼女の個性が生きているように思う。

Itzhak Perlman, Vladimir Ashkenazy (1983年)
ヴァイオリンとピアノの名手どうしの演奏。パールマンの音には寛大、温和なところが足りないような気がして私の好みではないけれど、これもピアノの演奏がすばらしく凡庸な演奏ではないので聴く価値はあると思う。

Gidon Kremer,Valery Afanassiev(1987年)
クレーメルはブラームスのソナタをたぶんこれしか録音していないと思う。アファナシエフによくあることだが全体的にかなり遅い。
私が好きな2番をクレーメルは穏やかに優しく奏でていて、Allegro AmabileのAllegro は完全無視の超スローモーションでAmabile(愛らしく)だけだが不思議と嫌味に感じない。1番はサントリーホールでのツィメルマンとの演奏はロマンティックだったけれど(それはたぶんツィメルマンの演奏のせいだと思う)、ここでは多少傍若無人な部分も感じられ、ブラームスへのシニカルな解釈が感じられる。そして最もドラマティックで美しい演奏が3番だ。(やはりクレーメルの奏でる音楽が大好き。)「僕たちはそれぞれ離れて誇りを持って生きてきたね。最近不安を覚えることが多いのは君だけではないよ。過去を振り返ると苦しかったことや甘美な出来事が走馬灯のように思い出されてくる。これまでの出来事をすべて受け入れ、尚且つ残された人生のすべてをかけてこの情熱を君に捧げるよ。」という風に聴こえる。他は超スローだったテンポが3番の第4楽章Presto agitatoでは誰より速く、これについてはクレーメルのこだわりを感じる。

Pierre Amoyal,Pascal Rogé(1991年)
素直な演奏で聴きやすい。1番はロマンティックで瑞々しいところと神秘主義的なところとのバランスが良い。2番、3番はブラームスの魅力の一つ多彩なリズム感が生きていると思う。ピアノが全体の構成と質感を作り出していて出色。

* * Maxim Vengerov, Alexander Markovich (1991年)
ヴェンゲーロフはいつ聴いても美しい響きと自然な流れの歌に溢れている。ただ深い感情の襞に隠れている情熱が見えてこない。それはピアノの演奏のせいかもしれない。ブラームスのヴァイオリン・ソナタのピアノがたんなる伴奏に終わってしまうと曲の魅力が半分損なわれてしまう。

Pinchas Zukerman,Marc Neikrug (1992年)
ヴァイオリンの音は美しいが、ピアノは前録音のほうが良い。前回と大きく異なるところはなし。

Gerhart Hetzel,Hermut Deutsch(1992年)
ウィーン・フィル往年のコンサートマスター ゲルハルト・ヘッツェルとヘルムート・ドイチュとの鮮烈な演奏。
クレーメルとツィメルマンとの演奏会の直後に友人が当時廃盤になっていたCDを貸してくれたのだが、数日前の演奏(色で言うと、パステルで描かれた7色の虹の外側に紫外線や赤外線まで感じられた。)とのあまりの違いに驚いた。現在のライナーノーツには心温まる演奏とあるけれど、それはロマンティックな豊饒さよりも、真っ直ぐで嫌味がなく、謹厳実直な厳しさがあった。またどこかノスタルジーを感じさせ、青白磁の香炉のようで繊細なヴァイオリンの音の美しさはピカイチ。ヴァイオリンが気持ちよく歌っている2番はドイチュが歌曲の伴奏に長けているからだろう。実演を聴きたかったな。

Kyung-Wha Chung, Peter Frankl (1995年)
チョン・キョン・ファのイメージからするとかなり控えめな演奏で慈愛が感じられるのだけれど、地味ともいえる。それはピアノのせいもあると思う。ヴァイオリンもピアノもどちらもが禁欲的、女性的すぎるのかもしれない。

* Viktoria Mullova,Piotr Anderszewski (1997年)
ムローヴァは30代半ば、アンデルシェフスキが20代半ばのときの録音。ムローヴァは彼の今日の活躍を予見していたのだろうか。
他の演奏では思い出さなかったのに、この演奏を聴いているうちに、若くして死んでしまった友人のことを思い出した。典型的優等生で声高に自己主張することなく優しく温和、でも心の中では天使と悪魔が火花を散らして葛藤しているような人だった。私にとってはさらっと聴き流すことのできない演奏で、クララの訃報を聴いたブラームスが雨の歌を演奏しているうちに嗚咽してその場を走り去ったという逸話を思い出させた。

Maxim Vengerov,Lylia Zilberstein(2004年)OP.108 3番のみ
ルガーノ・フェスティヴァル ライヴ録音。
ヴェンゲーロフの音は好き。このところ聴けないのが残念。しかし、この演奏を聴くとヴェンゲーロフが演奏活動を辞めて(休止して)しまったのは、肩の故障のためだけではないのではと思わされる。艶やかな音は美しいし、テクニックもある、でも彼だけが表現できる情念世界はここには表れていないのではないかな。まだ30代の彼が豊かな人生経験を積んで演奏活動を再開する日を楽しみにしていよう。

* Nikolaj Znaider, Yefim Bronfman(2005年)
正統派の繊細さがあり尚且つ男性的な演奏。
3番のadagioはあまりの気持ちよさに眠くなってしまった。(貶してない。)諦観や焦燥感をみせて嘆くことなく、最後までいい人ブラームスが泰然と構えている。

* * Anne-Sophie Mutter, Lambert Orkis (2009年)
今年の4月に聴きに行く演奏会と同じ奏者、プログラムでの録音。前回の録音から27年が経ち、天才少女と呼ばれたムターは女王と呼ばれるようになった。予約したCDが届くのが待ち遠しかった。しかし正直こんなに感動するとは思わなかった。美音を鳴らしてムターらしさを演出せずとも様々な音色を使い分け陰影に富んだ演奏の中に自然体の芸術家が存在していた。
それまでの上手な演奏家だけれど同性として時として苛つくときもあって積極的に聴こうという気がしなかったのが、(その点ムローヴァのほうが好きだった。)メンデルスゾーンのコンチェルト(クルト・マズア)と室内楽(アンドレ・プレヴィン)を昨年TV放送されたものを聴いてからムターに興味を持つようになった。
4月のリサイタルが楽しみ。

2009年12月28日 (月)

2009年 ダンス&音楽&舞台公演鑑賞総括

今までやったことなかったけれど、メモとして書き出しておこう。

2009年 ダンス&音楽&舞台公演鑑賞総括

1/8 「眠れる森の美女」マラーホフ&ヴィシニョーワ 東京バレエ団
    東京文化会館
1/18 山本貴史 ノースプラザ
1/20 奇才コルプの世界  オーチャードホール
1/21 ミハイロフスキーガラ  オーチャードホール
     ルジマトフの「海賊」アリ!
    「ムーア人のパヴァーヌ」ムーア人(オテロ)、「アダージェット」。
      結局ルジマトフの姿が脳裏に焼きついている。
2/6  ベジャールガラ ギエム 東京バレエ団  ゆうぽうとホール
     「ボレロ」「ペトルーシュカ」「ドン・ジョバンニ」
2/10 新国立劇場「ライモンダ」ザハロワ&マトヴィエンコ
2/11 上原彩子 サントリーホール
2/12 ハンブルクバレエ「人魚姫」 NHKホール
      これぞ総合芸術!!ノイマイヤーの描く世界は悲しく残酷でも
    必ずそこにそっと愛がある。
2/20 エリック・クラプトン&ジェフ・ベック さいまたスーパーアリーナ
3/14 「愛の妙薬」森麻季 錦織健 ソニック・シティ
4/25 福井敬 さいたま芸術劇場
5/3  ラ・フォルジュルネ・オ・ジャポン 東京国際フォーラム
    ベレゾフスキー ホールB5
    シュ・シャオメイ ホールD7
    イド・バル=シャイ G409
    ヴァシリエヴァ 勅使河原三郎 ホールD7
5/19 ポリーニ シューマン・ドビュッシー プログラム
    サントリーホール
5/22 ツィメルマン 3大B+シマノフスキ さいたま芸術劇場 
5/23 薪能「羽衣」 氷川神社
6/10 ツィメルマン 3B(バツェヴィチ)+シマノフスキ
    サントリーホール
6/25 新日本フィル:アルミンク すみだトリフォニーホール
6/26 ヤン・ファーブル「寛容のオルギア」 さいたま芸術劇場
6/29 アレクサンダー・ガヴリリュク さいたま芸術劇場
7/24  第73回コンセール・C ドビュッシーとカプレの夕べ
8/2  バレエ・フェス Aプロ 東京文化会館
8/9  バレエ・フェス Bプロ 東京文化会館
    バレエの楽しさを堪能。これで音楽が良ければ・・・
9/5  福井敬 カザルスホール
     リサイタル後のオフ会がまた楽しかった。
10/19 バンベルク交響楽団:ジョナサン・ノット+テツラフ
     サントリーホール
10/27 シンシナティ交響楽団:パーヴォ・ヤルヴィ+ツィメルマン
     東京文化会館
11/6  BEING GIDON KREMER  オーチャードホール
11/30 マリインスキー「白鳥の湖」ヴィシニョーワ&コルプ
     東京文化会館
12/5  レ・ヴァン・フランセ さいたま芸術劇場
12/11 福井敬&ヴィンチェンツォ・スカレーラ 紀尾井ホール
12/20 「聖なる怪物たち」シルヴィ・ギエム&アクラム・カーン
     東京文化会館

ギエム     4公演
ヴィシニョーワ 4公演
マラーホフ   3公演
ザハロワ    3公演
ブシェ     3公演

福井敬     3公演
ツィメルマン  3公演

東京文化会館    6公演
さいたま芸術劇場  5公演
サントリーホール  4公演
(東京国際フォーラム4公演)
オーチャードホール 3公演

舞踊等 13公演
ピアノ(含コンチェルト) 9公演
弦楽器中心(含コンチェルト) 4公演
声楽(含オペラ) 5公演
管楽器中心 1公演
ブルース等 1公演   

ということで、ギエムとヴィシニョーワが最も多かった。そしてなんといっても、福井敬3公演というのが驚き。

バレエでは「人魚姫」が最も印象深かった。独特の振付、舞台構成、照明、衣装、音楽、そしてシルヴィア・アッツォーニの圧倒的な演技。すべてが美しく感動的だった。それに、リアブコは目の前にいたし、ノイマイヤーは躓いて、危うく私の膝に倒れこみそうになるし・・・なんてことはともかく、また日本で観たいし、音楽だけのCDと舞台全部(マルチヴューとか)のDVD出してほしい。海外までは観に行けない人のためにぜひ!!
世界バレエフェスに関しては次々と目の前に現れるスターダンサーたちに圧倒されたが、ロホ、シムキン、オシポワ、サラファーノフ、彼女・彼等にはスーパーテクニックとともに、踊る楽しさを、コピエテルス&ジル・ロマン「フォーヴ」とかギエム&ル・リッシュ「アパルトマン」、ヴィシニョーワ&マラーホフ「ル・パルク」は彼女たちならではのスターオーラを堪能。またアニエス&ジョゼとコジョカル&コボーには目の保養をさせてもらった。他の人たちにも楽しませてもらった。

音楽では5月のポリーニ、ツィメルマンのリサイタルが最高だった。
ポリーニのシューマンは大きくて、優しくて、愛が溢れていたし、ウェーベルンやドビュッシーは次々と繰り広げられるファンタジーのようで最後のころはステージにいるポリーニの姿をみているのではなく、プラネタリウムでリクライニングチェアーに腰かけ満天の星を見上げて空想世界に遊んでいるような至福の時を過ごした。
一方、ツィメルマンのバッハやベートーヴェンは今まで私が思っていた曲とは全く別物で衝撃的だったと同時に、1台のピアノでこれほど音色も響きも次々にガラッと変えられるものなのだと感心することしきり。この人の演奏するブラームスは躍動感に溢れ、ため息が出るほど美しい。Op.119の艶っぽさは古いけどルプー1976年の録音と雰囲気が似ていたかも。バツェヴィチとシマノフスキに関しては、圧倒されてうまく言葉がみつからないが、とにかくこの人の演奏はいつもこちらの予想をひらりと飛び越えて羽ばたいていく。煌めくような音で美しい演奏をする優秀なピアニストという枠には留まっていない。
ポリーニもツィメルマンもCDなどの録音とは異なり、演奏者の描く色彩と感情の渦が聴衆を飲み込み、虜にした。今この演奏が聴けて幸せだと思った。

2009年11月 9日 (月)

BEING GIDON KREMER

2009年11月6日 オーチャードホール

ネタばれになるといけないということで、詳しいことは皆さん口をつぐんでいるようで。
ジョークもたくさんあっておもしろかったけれど、演奏自体は手抜きなし。どの曲も素敵だったけれど、私は大好きなベートーヴェン ヴァイオリン協奏曲のカデンツァ(シュニトケ)が聴けて感動した。いつも聴いているCDとは全然異なる音色、広がり、温度。そして後半は次々とクラシック音楽や人生における問題を投げかけてくる。クレメラータ・バルティカの人たちは実に器用にさまざまな演奏をこなしながら、ダンスや演技もこなしていく。イグデスマン&ジューは司会進行役といった感じかな。イグデスマンのヴァイオリンを本人が言っていたようにもう少し長く聴いていたかった。演奏された曲が多すぎて、忘れてしまいそう。覚えているうちに、曲目だけでも発表してくれるといいな。帰り際に張り出された紙の前には携帯を構えた大勢の人がいて割り込めなかった~。

あちらこちらに書かれているのでいまさらな気もするけど、ツィメルマン氏いらしてました。開演前は黒のコートを着て何やら険しい表情でしたが、休憩時間にはグレーのやわらかそうな起毛の生地でサイドベンツのスーツでした。とても目立っていましたが、それでもファンに取り囲まれることもなく休憩されてました。

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12/24 追記 演奏曲目は結局主催者&オーチャードホールサイトでは発表されなかったようなので、自分用備忘録として。

第1部「過去」
モリコーネ:マレーナ序曲(映画『マレーナ』より)
L. モーツァルト:おもちゃの交響曲より 第1楽章
モーツァルト:交響曲第40番より 第1楽章~ジェームズ・ボンドのテーマ
イザイ:子供の夢 作品14
J. S. バッハ(グノー編曲):アヴェ・マリア~ピアソラ:リベルタンゴ
ロックバーグ:カプリース変奏曲
プロコフィエフ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタより 第3楽章
イグデスマン:テ・キエロ・コモ・ロコ
スクリャービン:ピアノ小品
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番より~カルメン:オール・バイ・マイセルフ
J. S. バッハ:ヴァイオリン協奏曲 イ短調 第3楽章ほか
ブリテン:フランク・ブリッジの主題による変奏曲 第7変奏(無窮動)
ベートーヴェン(カデンツァ:シュニトケ):ヴァイオリン協奏曲 第1楽章ほか

第2部「現在」
ニノ・ロータ:8 1/2(映画『8 1/2』より)
シューベルト:メヌエットより トリオ
モーツァルト:アイネ・クライネ・ナハト・ムジークより
シュトラウス:美しき青きドナウ
ハイドン:十字架上のキリストの最後の7つの言葉より「地震」
ドヴォルザーク:エレジー(4つのロマンティックな小品)より
ピアソラ:ブエノスアイレスの春
クラシック代表曲メドレー(メンデルスゾーン、ベートーヴェン、ブラームス、モーツァルト、ベルク etc.)
マーラー:交響曲第10番 アダージョより
(アンコール)
ウィ・ウィル・サヴァイヴほか

2009年10月 5日 (月)

ブラームス ヴァイオリン協奏曲

10/7 グリュミオーとテツラフとラクリンを追記
10/13 クレーメル+カラヤンとオイストラフ+クレンペラーを追記
10/18 クレーメル+アーノンクール+ロイヤルコンセルトヘボウを追記
****3/2( 2010)  グリュミオー+ベイヌム+ロイヤルコンセルトヘボウと
    ムター+マズア+ニューヨークフィル 、ムローヴァ+アバド+BPOを追記

このところ体調不良で癒されたい(そういえば少し前にはロ短調に嵌っていたな)気持ちが強くて、桂米朝・枝雀の上方落語とモーツァルトを聴いていることが多くて、ブラームスの予習を怠っていたことに気付いた。
今月ジョナサン・ノット+バンベルク響+クリスティアン・テツラフのブラームスを聴きに行くのだった。ブラームスのヴァイオリン協奏曲はもともと好きな曲だけれど、一度にあれこれ聴き比べたことはなかったので、これを良い機会に改めて聴いてみた。

 Brahms Violin Concerto 

ハイフェッツ+フリッツ・ライナー+シカゴ響(1955)
これは1950年代の録音にしてはきれいだし、ハイフェッツの演奏が技巧に走ったものではなく楽器が存分に鳴り、歌い、意外にもカデンツァ以外はスタンダードなブラームスを聴かせてくれる。せっかくハイフェッツを聴いているのにある意味そこが面白くないと言えるかもしれないが。スピード感があって私は好きな演奏の一つ。

****グリュミオー+ベイヌム+ロイヤルコンセルトヘボウ(1958)
ずっと欲しかったこのCDなかなか入手できなかったが、amazonで発見して手に入れることができた。
1971年の録音に比べると全体的に速く、より情熱的で、グリュミオーが力で寄りきろうとする部分もあり一途さと自信が感じられる。一方、オーケストラもグリュミオーと渡り合う緊張感をもちつつ充分ロマンティックに歌っており、録音から50年経ってもなお、この曲の最高の演奏の一つだと思う。
グリュミオーの演奏で好きなものにツィゴイネルワイゼンとツィガーヌ(ともに1962年録音)があるが、超絶技巧だけでない、ロマの底なしの暗い情念とあらゆるものを焼き尽くすかのような情熱が息苦しいくらいに表現されていて、このブラームスのコンチェルトでも同じ魅力が発散され、グリュミオーが演奏する神の領域に達するかのようなモーツァルトやバッハにはない一面を見せてくれる。

コーガン+コンドラシン+フィルハーモニア管(1959)
音色は豊かでオーケストラもロシアのオーケストラかと思うような大仰さをもっていてヴァイオリンとのバランスも悪くない。重音の響かせ方や第3楽章のリズム感など面白みに欠ける。

オイストラフ+クレンペラー+フランス国立放送局管(1960)
悪くなかったような気がするのだが、眠くなってしまった。全体的には美しい音色なのだが、高音の速いパッセージは音の輪郭がぼやけるのと音程が不安定になるのが気になる。もっと若い時の演奏を聴かないと公平じゃないのかもしれない。

オイストラフ+コンドラシン+モスクワ・フィル(1963)
巨匠らしい泰然とした艶やかな演奏なのだが、時々音が外れるのが気になるのと、第3楽章のリズム感が重く感じられる。

グリュミオー+コリン・デイヴィス+ニュー・フィルハーモニア管(1971)
一つ一つの音を慈しむかのような演奏で、まるで母や祖母から受け継いだ宝石箱を覗き込んでいるような気持ちにさせられる。ブラームスの音楽のそしてヴァイオリンという楽器の美しい部分を表現するとこうなるのだというお手本。オーケストラは表に出て主張することなくあくまでグリュミオーを引き立てている。カデンツァはヨアヒム作をほとんど変えずそのまま弾いていると解説されているが、こんな美しいカデンツァを聴いたことがない。

クレーメル+カラヤン+ベルリン・フィル(1976)
クレーメルらしくたいへん繊細な響きの高音で、オイストラフの高音部分とは音程が異なるのではないかと思う。カデンツァはクライスラーのもの。ベルリン・フィルのキラキラと輝くような音色との相性は悪くない。1、2楽章のリズム感とテンポはカラヤン色が強いように思うが、3楽章はクレーメルがオーケストラを牽引していこうとして、思わず音を外すところもあって逆に楽しくなってしまった。

スターン+メータ+ニューヨークフィル(1978)
アイザック・スターンもズビン・メータも嫌いではない。でもこの演奏には色気がなさすぎる気がする。ブラームスの曲はテンポを揺らして演奏されることが多いが、テンポを揺らした時に音程が上ずってしまうと興ざめしてしまう。スターンは若い時はもっとカッチとした演奏をしていたように思う。ヴァイオリンという楽器は本当に難しいのだと思う。自分が弾けないのでその難しさがどんなものかが理解できないのが残念だけれど。

ムター+カラヤン+ベルリン・フィル(1981)
ムター17、8歳の演奏。精巧なテクニックはもちろんだけれども、豊かな情感と鋭利な突っ込みとの鮮やかな切り替えは老獪ささえ感じさせる。五嶋みどりがヴァイオリンの音を聴くと男女の区別もおおよその年齢も生まれ育った文化圏まで分かると書いていたが、私にはそこまではわからない。でもこの演奏は女であることを主張しているように思う。カラヤンがあまり得意でない私にはオーケストラ、特に弦楽器がヒステリックに聴こえるが、好き嫌いを超えてムターの演奏にはとにかく舌を巻く。

クレーメル+バーンスタイン+ウィーン・フィル(1982)
一般的でないとは思うけれど、この演奏が私にとってのベスト。曲者どうしの組み合わせがたまらないのだ。基本的にクレーメルの奏でる音が好きなことに加えて、マックス・レーガーのフーガをカデンツァにしているのがクレーメルらしい。ヴァイオリン・コンチェルトの場合、オーケストラには大勢のヴァイオリン奏者がいてその代表であるコンサートマスターとソリストはいわばライヴァルなわけで、ヘッツェルとクレーメルとの駆け引きが(もちろんバーンスタインが仕掛けている)引き締まった演奏にしていると思われる。また、オーボエとチェロの音が柔らかく美しいのも気に入っているところ。

****ムローヴァ+アバド+ベルリン・フィル(1992 サントリーホールライヴ)
ムローヴァの美音と几帳面な演奏を暖かくサポートするアバドの愛情を感じる。ベルリン・フィルがこんなに優しい響きを作り出せることに少なからず驚く。ムローヴァの演奏は几帳面だけれど大変な熱演で彼女はこういった内向的な情熱を表現することに長けているというか、適性があるのだと思う。情熱的なのに初めから終わりまで自然体で、これ見よがしな部分がなく気持ちが安らぐ。この曲は一般的には多くの聴衆に向けて聴かせるものと思われるが、これは親しい友人同士のお茶会で寛いでいる気分だ。
ムローヴァのCDを今回まとめて聴いた。どの曲も私にとっては聴きやすく特にブラームス、プロコフィエフ、バッハはソナタでもコンチェルトでもたいへん美しい。

ジュシュア・ベル+ドホナーニ+クリーヴランド管(1994)
ベルの演奏は奇をてらったところがなく、淀みなく美しいメロディを奏でていく。ベルが若いせいか、屈折していない、清々しい演奏でユダヤ人らしくなく男臭さがない、ロマンティックなブラームスである。カデンツァはベルのオリジナルで面白い。

竹澤恭子+コリン・デイヴィス+バイエルン放送響(1995)
全体のテンポ設定が遅く、重々しいオーケストラはドイツらしい。竹澤のヴァイオリンも重厚な音色で奏でられる。たいへん気真面目な演奏のため少し息苦しい。今回聴いたカデンツァでヨアヒムのものの中では最も個性的でかつ美しい。(グリュミオーを聴いてしまったので、一番の座を譲ってしまった。)

クレーメル+アーノンクール+コンセルト・ヘボウ(1996)
自然に溶け込んでいるカデンツァはエネスコ作。全体的に室内楽のような雰囲気の仕上がり。このCDは、クレメンス・ハーゲンとのドッペル、ヴァイオリンとチェロのための協奏曲イ短調のほうが聴き逃せない。ヴァイオリン協奏曲よりもさらに室内楽的性格の強いこの曲が大変美しい。アーノンクールの妻との思い出が語られるまでもなく、本来この曲が生まれるきっかけになったブラームスとヨアヒムとの和解が、ヴァイオリンとチェロ、オーケストラとの対話に感じられる。

****ムター+マズア+ニューヨークフィル(1997)
楽器を艶やかに鳴らすことにかけては共演者が誰でも優れているムターだけれど、カラヤンが亡くなって年月が過ぎてもまだムターの自分探し途上でこの曲本来の面白みには欠ける気がする。

ヒラリー・ハーン+マリナー+アカデミー室内管(2001)
21歳と若いハーンが美音を響かせ、きっちりと音程を崩さずに、スケールの大きな演奏を聴かせてくれる。真面目なせいか少し面白みに欠ける。

テツラフ+ダウスゴー+デンマーク国立響(2006)
演奏は情熱的だが、音が硬いに膨らみが足りないのは、使用している楽器がモダン楽器だということもあるかもしれないが、弓がカーボンのせいではないかと思う。彼がカーボン弓を使うのは、普通の弓だと切れてしまうからだと聞いたが、この楽器で独自の境地を切り開いていくのを楽しみにしたいと思う。
この演奏にカップリングされているのがヨアヒム・ヴァイオリン協奏曲第2番。はじめて聴く曲なのになぜか親しみを感じるのは、ベートーヴェンやブラームスのカデンツァで聴いている節回しが同じだからか?

ラクリン+マリス・ヤンソンス+コンセルト・ヘボウ(2008)
昨年NHK音楽祭の時の録画。
ジュリアン・ラクリンの音は陰影が濃くて特に低音は深く豊かに響く。ジョシュア・ベルとは対照的に大胆で男臭い演奏。オーケストラが艶やかな音を奏でていることで、そのことが強調される。オーボエ奏者とラクリンは友達だそうだが、このオーボエがたいへん目立つ。今年6月亡くなった黒田恭一さんがラクリンの演奏を聴いて「若き巨匠」と言っていた。合掌。

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ぜひ聴いてみたいのはグリュミオー+コリン・デイヴィス+ニュー・フィルハーモニア管
これを聴いたら、これがベストになるのではないかという気もしているくらい、グリュミオーは大好きなヴァイオリニストで、モーツァルトやバッハ、ベートーヴェンその他の小品集は持っているのにブラームスのコンチェルトは聴いたことがない。この人の音の美しさはこの世のものではないようで別格。生の演奏を聴けなかったことが非常に残念な人。

********************

そうだやっぱりグリュミオーとテツラフは聴かなくては。ついでにクレーメルがアーノンクールと組んだのと、オイストラフは録音が数多いからもう1枚くらい聴いておこうかな。
ということで、少しずつ書き足していくつもり。

2009年5月25日 (月)

Krystian Zimerman 2009.05.22 さいたま芸術劇場

200952219:00開演 於:彩の国さいたま芸術劇場

Program A

J.S.バッハ:パルティータ第2番 ハ短調 BWV826

      第1曲 シンフォニア

      第2曲 アルマンド

                第3曲 クーラント

      第4曲 サラバンド

      第5曲 ロンド

      第6曲 カプリッチョ

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第32番 ハ短調 Op.111

ブラームス:4つの小品 Op.119

      第1曲 間奏曲 ロ短調

      第2曲 間奏曲 ホ短調

      第3曲 間奏曲 ハ長調

      第4曲 ラプソディ 変ホ長調

シマノフスキ:ポーランド民謡の主題による変奏曲 Op.10

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まだポリーニの音の余韻が残っていて、身体の深奥からポカポカと暖められている私は、軽い疲労も心地よく穏やかな気分で会場へと向かう。

今日は初めてツィメルマンの演奏を体験する母を同伴。

バッハのパルティータ第2番は初めの1音から一撃ともいうべき強音でありながら計算された丁寧な響きを作り出し、次々と高速で重ねられる響きの中に遊び心が繰り出される。子供のときバッハが苦手だった私がもしこんな演奏を当時聴いていたら、練習が好きになっていたかもしれない。

と、気分が高揚してきたところでベートーヴェンのソナタ32番。音の塊で後頭部を連打されたような感じだったが、次第にその刺激に慣れてくる。痛みを我慢しているうちに次第に感覚が麻痺して恍惚状態に陥るよう。地獄の門を前にして自分の境遇を忘れてそれに魅入られた芸術家といった趣の第1楽章。一転幸福感に包まれる第2楽章ではすっかりトリップしてしまったのか、はたまた燃え尽きた命を大勢の天使が迎えに来て、無事天国へと召されたのか。この曲はどこかクレーメルの演奏を想起させた。エルンスト作曲『シューベルト〈魔王〉の主題による大奇想曲』とかベートーヴェン作曲『〈フィガロの結婚 伯爵様が踊るなら〉の主題による12の変奏曲』あるいはクプコヴィッチ作曲『SOUVENIR』といった世間では好き嫌いが分かれるかもしれないが私は大好きな(もちろんクレーメル自身が好んでする)演奏の数々。

後半、ピアノは前半と全く変わりがないはずなのに、ブラームスOp.1191曲で音ががらりと変わる。この透明感は聞き覚えがある。2007年のサントリーホール、ブラームスのヴァイオリンソナタ第2番のピアノのでだし。頭の中で、クレーメル、ツィメルマン、シューマン、クララ、ブラームスが踊り始める第2曲。専門的なことは分からないが、第3曲、第4曲を聴くと私はシューマンの『ウィーンの謝肉祭の道化』とか『ダヴィッド同盟舞曲集』を思い出してしまうのだが、このときは完全にシューマン、クララ、ブラームスの3人の世界へと没入。このアンドレ・ジッド作「狭き門」の主人公ジェロームのごとき青年ブラームスに対して、アリサより成熟した大人だったクララと、更に大人であり続けねばならなかったシューマンとの関係を回想する晩年のブラームスを諦観よりも熱い情熱で表現するツィメルマン。実は私はこの人の激しさをこの曲で最も感じたし、この日一番好きな演奏だった。

そしてシマノフスキ。ステージ袖から出てきて椅子に腰掛けるとちょっと咳き込むツィメルマン。そんな姿を目にしたせいか、私もなぜか喉がいがらっぽく感じられ息苦しかった前半。しかし徐々に描き出される世界に引き込まれそんなことを忘れた。祖国の作曲家の作品に込める思いというのは特別なものがあるに違いなく熱演だったと思う。葬送行進曲で葬列が遠くからだんだん近寄ってきて去っていく遠近感や美しさはすばらしい。また繊細なメロディがどんどん豪快で壮麗な響きへと変化していく様は爽快感があった。

鳴り止まない拍手に何度もカーテンコールで呼び出されて最後は、ポケットから小さなマスクを取り出してかける真似をして笑いをとり、お茶目な笑顔で終了。そういえば、数日前のマエストロ・ポリーニはピアノにも拍手をというジェスチャーを見せて満足そうに微笑んでいた。会場にツィメルマンも来ていたようで、あの幸福なひと時を聴衆の一人として共有できたのかと思うと、うれしい。

どの曲もかなり高速で飛ばすところはあっても激情に駆られて破綻することなくしっかりと構成された演奏であったと思う。また、異なる作曲家の作品を時代を追って並べたので、曲が変わる毎にピアノの音の雰囲気ががらりと変化し非常に面白かった。母は「この感動をなんと表現していいかいろいろ考えたのだけど」と前置きした上で「酒米を60%も削って作る純米大吟醸のように香りが豊かで雑味の無い音だった」と言った。我が家にいる間に、いろいろな日本酒を舐めてそのおいしさに開眼した人らしい言葉だった。

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2009.07.02 追記

「音楽の友」7月号にクレーメルへのインタビュー記事が掲載された。その中で印象に残った言葉が『--私にも好き嫌いはありますし、---例えばシューマンとブラームスに同じように接することができるかというとそれは違います。---私はブラームスにはシューマンほど愛着を感じません。また、ベートーヴェンとシューベルトでは、シューベルトにより愛着を感じます。--』

クレーメルのそういった愛着はなんとなく感じられるし、おそらくツィメルマンはブラームスにより共感を覚えてきたのだろう。たぶんそういう指向性というか気質が感じられるので、op.119の第2曲のワルツで踊るクレーメルとツィメルマンが見えたのではないかと、妙に納得してしまった。それと同時に、2007年のスーパーデュオのブラームスプログラム世界ツアーは(何が本当のきっかけかは知る由もないが)ツィメルマンのためにクレーメルがプロデュースしたのではなかろうか、とさえ思えてきた。

クレーメルという人は実生活における愛憎よりも、音楽家としてのあるいは芸術家としてのシンパシーを優先させる(少なくともプロフェッショナルとしては)人だと思うので、そういう少し屈折した理性の在り方がシューマン的で、それだけに内部へ押し込められた感情が思いがけない形でひょいと顔を覗かせるのだろうと思う。

一方、ツィメルマンは憂いのあるブラームスの内向的表現はこれまでも長けていたが、今回の演奏を聴くと、より型に嵌らない自由な表現へと向かっているように感じる。次回以降の演奏はガーシュウィン、ショパンと続くようだが、いつかシューマンの「暁の歌」を聴きたい。

2008年12月14日 (日)

クレーメルの青春譜

旧ソ連から亡命した芸術家は多い。しかし、クレーメルのように公然と政府に掛け合って自由を獲得した人は他にはいないのではないだろうか。ハードボイルド小説のようなクレーメルの半生記である。

この本を読むとすべてが真実かどうかということよりも、自分史を実名入りで書き表すことができるのは、いかにも芸術家らしいと言わざるを得ない。いわゆる暴露本とも違うのだが、読者の方がある種の居心地の悪さすら感じてしまう。比較的思いやりをもって書かれる女性達、タチヤーナ・グリンデンコ、エレーナ・バシュキロワ、アルゲリッチとバレンボイム。それに比べてリヒテル、ギレリス、オレグ・マイセンベルグ、シュニトケ、オイストラフ、コーガン、ロストロポーヴィチ、ロジェストヴェンスキー、カラヤン、キーシン、ヴェンゲーロフその他大勢の人たちは、この歯に衣着せぬ物言いをどう感じるだろうか。亡くなってしまった人たちのことを多少悪く書こうとも、名誉毀損というほどではないから構わないという計算高さも感じさせる。
”奔放な女性関係”(?)は、抑えきれないくらいの情熱がなければ芸術家としては大成できなかっただろうし、結婚という形をとらないと恋愛が成就しにくい社会と時代背景だったことは理解できる。ただバシュキロワとの別れについてはさらりと流されていて、この話にバレンボイムは登場しない。クレーメルかバシュキロワかバレンボイムが亡くなった時に自伝第3弾が出版されるのかもしれない。---あぁ、そういえば何気なくジャクリーヌ・デュ・プレの名前もでてきた。

私がクレーメルを知ったのは大学生のときに聴いたFM放送ではないかと思う。当時の放送を録音したカセットテープがないか調べたが残念ながらみつからなかった。当時クラシックが好きだったわけではないが、他の人の演奏とは異なる音の多彩さと独特のリズム感に惹かれ、クレーメルだけは聴き分けられたように記憶しているが、風貌については興味がなかった。ところが、今になってみるとどことなくクレーメルと家人が似ていて(特に若いときの写真をみると)笑ってしまう。

年月が経ち、あるとき友人からピアソラのCDを手渡された。そのエキセントリックさがクレーメルの音の響きに似ていると思ったら、なんとクレーメルはピアソラの伝道者になっていたのだった。知らなかった。友人にそのことを伝えると、クレーメルのファンで、「クレーメルの音は暖かいよ。」と言っていた。わたしは変なところも美しい音を奏でるところも含めてその表現の多彩さが好きなのだが、身近にクレーメル ファンがいたとは。私が好きなのを知っている家人が「真面目なおじさん」と言ったときに、「そうでもないよ。ツィマーマンに比べると結構ずっこけてるよ。」と言ったが、このところツィマーマンの印象も少し変わってきたので、クレーメルに影響されたのかもしれない、と思っている。

2008年10月14日 (火)

シベリウス ヴァイオリン協奏曲

先日、ギドン・クレーメル+クレメラータ・バルティカ+オーケストラ・アンサンブル・金沢+井上道義の演奏を聴いてから、そのヴァイオリンの響きが頭の中から離れず、他の演奏をいくつか聴き比べてみた。

1. ギドン・クレーメル 
  ロジェストヴェンスキー指揮ロンドン交響楽団
  1977年録音

  ロジェストヴェンスキーらしい野生的で厚みのあるオーケストラの響き。正確な音程と変幻自在な音色とテンポ操作はいかにもクレーメルらしく先鋭的で自信に溢れ、躍動感が強く、互いに触発しあう大変スリリングな演奏。先日のオペラシティでの演奏と最も異なるのは、録音と生演奏との違いもあるけれど、音色の多彩さ(生演奏のは録音よりさらに多彩でピアニシモでもしっかり色の明度、彩度、色相、更に艶まで描き分けられていることが分かる)。

2. チョン・キョンファ
  アンドレ・プレヴィン指揮ロンドン交響楽団
  1970年録音

  ロジェストヴェンスキーに負けない爆音を鳴らすプレヴィンにちょっと驚く。この中では最も古い録音ながら現代的感覚がするのはリズムとテンポのせいだろうか。当時の年齢がこの中では最も若いチョンが挑みかかるようにビュンビュン飛ばしていき、このヨーロッパデビューでセンセーションを起こしたというのが良く分かる。

3. マキシム・ヴェンゲーロフ
  バレンボイム指揮シカゴ交響楽団
  1996年録音

  華やかな金管と上品な弦楽器と木管で、オーケストラの技量を十分引き出してるバレンボイムはさすがなのだが、おだやかなテンポが幾分この曲のスリリングさを消しているように思う。ヴェンゲーロフは十分に美音を奏でているが数箇所音を外していて、この曲の難しさに改めて気づく。
 先日のクレーメルの演奏を聴くまでは、この演奏が一番のお気に入りだった。

4.神尾真由子
 原田幸一郎指揮日本フィルハーモニー管弦楽団
 2007年サントリーホール録音

  チャイコフスキーコンクール優勝凱旋公演。2のチョンとほぼ同年齢。なのだが、ダイナミクスに欠ける。音量は十分あるので今後に期待したい。シベリウスのあと演奏したチャイコフスキーのコンチェルトのほうがのびのび演奏していて向いているようだった。オーケストラは管楽器の技量不足による歯切れの悪さと全体的に重いのが気になった。
  

2008年9月25日 (木)

シベリウス ヴァイオリン協奏曲 Vn.ギドン・クレーメル

東京オペラシティ 「ウィークデイ・ティータイム・コンサート7」に行って来ました。夢のような2時間でした。お得な6000円。1階16列。
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シベリウス《カレリア》
アンサンブル金沢は小さなオーケストラだけれど、オペラシティのコンサートホールは音が良く響くので、音量も十分。オーケストラのあらは金管、特にホルンで目立つことが多いけれど、そつなくこなして一安心。トロンボーンはきれいだった。

シベリウス ヴァイオリン協奏曲
クレーメルは不機嫌なのか、ヴァイオリンを肩に担ぐような高い位置に持ち上げて登場。今日の装いも少しカジュアルな黒の長めのベスト・アンサンブル。白いシャツの袖口カフスの黒のパイピングがお洒落。
出だしは、乾いた音で、あれっ。しかし、徐々に艶が増し、カデンツァは渋いながらも朗々と歌い上げ、少し長めの演奏だったような。第2楽章、演奏の温度が少し上がり、暖かいぬくもりを感じた。それはヴァイオリンのせいだけでなく、オーケストラが、アンサンブル金沢+クレメラ-タ・バルティカと人数がかなり増えて、初めは様子見だったものが、全体の呼吸があってきたからのような気がする。第3楽章、自然に身体が縦ノリになってしまうような疾走感の心地よさ。この音楽自体が本来持っている様々な色彩と響きをさらに強調、増幅させるかのように、百面相の変化を見せるクレーメルのヴァイオリンを堪能。昨年聴いたブラームスのヴァイオリンソナタのときの楽器は、ニコロ・アマティだったようだが、今日の楽器は別物のような音だった。気のせいかな。だとすると、昨年はクリスティアン・ツィメルマンのピアノと器(サントリー・ホール)の違いかしら・・・もっと甘い音色だったけれど。

アンコールはカンチェリ、V&V。
カンチェリはグルジア出身ということで、ロシアとグルジアが戦争状態にあることを「馬鹿だ。」とクレーメルは井上に言ったそう。平和を祈ってとのことだった。初めて聴く曲だった。ヴァイオリンの細い冷たい音が静かに響いて、祈りだということが伝わる。万雷の拍手。

今日の聴衆は年配の方が多く、咳をしたり、くしゃみをしたり、何か物を落としたり、雑音が気になる場面もあったのだけれど、演奏者は集中力を切らせることなく無事演奏できてよかった。

後半はグリーグプログラム。
バルティカのホルベアの時代よりも合同のペール・ギュントもさっきのクレーメルの演奏を聴くのに集中力を使い果たして、リラックスして少々眠気が・・・
フルートやオーボエ、クラリネットなど木管もきれいに響いたし、弦楽器全体、まとまっていてよかった。と、簡単すぎ?
クレメラータ・バルティカがステージにでてきて着席したら、チューニングしないでいきなり演奏始めたのが、格好良かった。ペールギュントは一応全員でチューニングして用意ができたところで、井上が走ってきて、さっと演奏開始。時間が押していて焦っていたのね。アンコールのときも、時間がないと言っていた。

そのアンコールは元気よく
スーザ 海を越える握手

井上がギドンと僕は同じ年と言っていた。私にはそうみえるけど。
クレーメルの髪が昨年以上に真っ白だった。

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