ヴィシニョーワ&チュージン 「ジゼル」
東京バレエ団「ジゼル」 2011.08.17 ゆうぽうとホール
ジゼル:ディアナ・ヴィシニョーワ
アルブレヒト:セミョーン・チュージン
ヒラリオン:木村和夫
バチルド:吉岡美佳
公爵:後藤晴雄
ウィルフリード:柄本弾
ジゼルの母:橘静子
ペザント(パ・ド・ユイット):
高村順子-梅沢紘貴、乾友子-長瀬直義、佐伯知香-松下祐次、吉川留衣-宮本祐宜
ジゼルの友人(パ・ド・シス)
西村真由美、高木綾、奈良春夏、矢島まい、渡辺理恵、川島麻実子
ミルタ:田中結子
ドゥ・ウィリ:西村真由美、吉川留衣
指揮:ワレリー・オブジャニコフ
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
木村@ヒラリオンの登場で、今日はジゼルへの投げキッスも盛大に音を立てることもなく、妥当な演技だった。
アルブレヒトの隠れ家またはロイスの家が2階建てなのに初めて気付いた。いつも手前側しか見ていなかった。奥に2階があった。アルブレヒトが登場したとき既にウィルフリードは家の中にいて、アルブレヒトがマントを脱ぎ、剣を家に置いてから一緒に出てきた。「あれ?そうだった?」
ロイスの正体を怪しんだヒラリオンがアルブレヒトの剣を持ち出すときに、玄関ドアから中に入った。
アルブレヒトがジゼルの家を訪問しようとするときに引きとめるウィルフリードはかなりしつこく引きさがっていたのをはじめとして、公爵一行を迎えるときの様子や、狂乱の場での様子などでも柄本弾@ウィルフリードの演技が昨年コジョカル&コボーをゲストに迎えた時http://luncheon-today.cocolog-nifty.com/blog/2010/09/post-bd73.htmlよりも細かくなっていた、と思ったら昨年は弾の兄柄本武尊だった。
ヴィシニョーワ@ジゼルは可憐な乙女の風情ではなかったけれども、才気煥発で元気そうなお嬢さんだった。前回観たヴィシニョーワは一昨年のマリインスキー「白鳥の湖」http://luncheon-today.cocolog-nifty.com/blog/2009/12/1130-2ea4.htmlだった。相変わらず踊りの質が高いだけでなく、彼女らしい役作りで感心したのは、バチルドの衣装に触れる部分。この場面ではジゼルがバチルドの衣装の美しさに目を奪われて思わず手にとってしまい、バチルドはジゼルの振る舞いに驚く、という解釈をすることが多いと思うけれど、許しもなく突然他人の衣装に触れられたら、普通怒るのではないか、触れた方は不審者扱いされても当然ではないかと思う。ヴィシニョーワはお姫さまのドレスの裾が綺麗に広がるように、気にかけていて、この時だけでなく、ジゼルの家に入る時にも裾を直していた。ジゼルは頭が弱いとか、変わり者ではなく、心臓が弱いけれど、踊りが上手な心優しい娘として描かれていた。そして、彼女の本領が発揮されたのはやはり2幕だった。生前は心臓が弱いので踊りを制限されていたが、その体から解放され、本能として踊れる喜びに溢れていた。ウィリから守るために、ジゼルの墓碑から離れないようにアルブレヒトに言ったのに、ジゼルの魅力の前には抗うことが出来ずにジゼルに走り寄ってしまうアルブレヒトの行動が観ている私たちに十分納得できるものだったと思う。
どうしてもヴィシ・オーラに圧倒そうなチュージンだったけれども、ジャンプした時の滞空時間が長くて背中が柔らかく踊りは端正でのびやかなラインが綺麗だった。2幕での衣装は紫のタイツで、ルジマトフのアルブレヒトが思い出されたけれど、あのなりきり領域には到達しえない。アントルシャ・シスを24回飛んだことよりも、ジゼルの体重が全く感じられない自然なサポートに感心した。ジゼルが消える前の最後のゆりかご(?)サポートはもっと別れがたい感じをチュージンが出してくれたら良かったかな。最後は多少の逡巡を感じさせつつも、ジゼルに良き君主になることを誓うかのように顔を上げて前進するポーズでお終い。
田中@ミルタはジャンプが重く感じられたし、少し安定感にかけたけれど、西村@ドゥ・ウィリの方がウィリらしい軽やかさと形式美があったと思う。
コラーリ&ペロー&プティパの「ジゼル」を何度か観ているともちろんタイトル・ロールを踊る人の表現力が最も問われるけれども、アルブレヒトとの関係の変化に心打たれるので、改めてジゼルとアルブレヒトのパートナー・シップの重要性を感じた。マラーホフはもうアルブレヒトを踊らないかもしれないが、ヴィシニョーワとマラーホフとの「ジゼル」が今だからこそ表現出来るものがあるように思う。さらにもっとあり得ないけれど、ルジマトフとの「ジゼル」だったら・・・と妄想に囚われる。
この日の演奏はとても気持ちよく聴くことが出来た。オーボエもヴィオラもその他の楽器も良かった。指揮者は基本的に拍手で演奏を止めることはほとんどなかった。オブジャニコフさんのときはいつもそういうスタンスだったと思うけど。
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