ヤン・リーピンの『蔵謎』
2011年4月6日 14:00 オーチャードホール
福島第一原発事故の影響で各国政府から日本への渡航自粛要請が出され、来日を取りやめる海外アーティストが多く、中止に追いやられる公演が軒並み多い。延期と発表されているものも、今後中止になる可能性を否定できない。
そんな中、敢えて来日するアーティスト達には頭が下がると同時に何故敢えてこの時期に来るのだろうかとも思う。東京での放射線被曝は許容範囲と考えている人は高齢者か、こわいもの知らずか、もしくは危機的状況のこの日本に対する使命感を持っている人だ。
今回ヤン・リーピン率いる歌舞劇団は雲南省、四川省出身の十代の若者たちが中心で、『蔵謎』の蔵はチベットを指し、雲南省、四川省、青海省、甘粛省、陝西省、チベット自治区を含む言葉らしい。今回の公演に際してヤン・リーピンが東日本大震災にお見舞いのメッセージを寄せているが、それは彼らが2008年に起きた四川大地震を経験しているからこそ、うわべだけのお見舞いではなく、実際に来日して公演を行い、その出演料の中から寄付をするという行為に結びついているのだろうと思う。地震の前は大勢いた中国人労働者の多くが帰国していなくなった東京に来て、放射線という目に見えない恐怖を若者たちに与えるのは申し訳ない思いで胸が痛い。
六弦琴は津軽三味線に近いし、民謡も日本のものと似ていて親近感を覚えたけれど、すべてを超越していたのがヤン・リーピンその人で、観音菩薩の涙から生まれたとされる多羅菩薩そのものに見えた。手指・足の爪先、頭の先まで身体のすべてがコントロールされていて無駄がなく、優しく、艶めかしく、人間離れしている。東洋の美そのもの。シルヴィ・ギエムが鋼の剛なら、ヤン・リーピンは柳の柔といえると思う。
前回公演の『シャングリラ』を見ていないことが後悔された。
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